東大寺 お水取り 春を待つ祈りと懺悔の法会 (朝日選書)
二月堂「修二会」を40年以上見守る女性研究者の解説書。複雑な法会を詳しくリアルに!
東大寺二月堂の「修二会(お水取り)」は、2013年で「1262回目」迎える祈りの法要です。巨大な大松明が上がることで有名になりましたが、女人禁制の堂内では、11名の練行衆を中心として、厳しい行が続けられます。本書は、そんなお水取りの法会を、40年以上にもわたって見続けてきた女性研究者さんが、その歴史や人々の姿、張り詰めた空気などを描いた解説本です。
お水取りの仕組みはとても複雑ですし、本行が3月1日~14日まで、前行となる別火(2月20日~2月末日まで)まで含めると、1ヶ月近い期間にわたりますので、一般の人間にはその全容はほぼ把握できません。本書では、それらの行のほぼ全てについて分かりやすく解説されているため、理解しやすかったです。
説明文:「1250年以上途絶えることなく伝え継がれた仏教行事。3月1日深夜、あたりの気を払い、11人の僧が次々とお堂の中に入って行く。ドッドッドッドッと床を踏み鳴らす音が響く。14日にわたる大法会「お水取り=修二会」の始まりである。僧たちは、世の人々に代わって、観音菩薩にその罪の許しを乞い、除災招福を祈り、修法を行う。蓮日の行である。さらに密教や修験道、神道、民俗、外来の要素まで取り入れ、稀有な大法会は伝えられた。古から人々は、勇壮なお松明で知られるこの法会に大きな期待をかけ、祈りを込めてきた。女人禁制の法会を、40年以上見続けてきた第一人者による「お水取り」への誘い。」
本書では、まずお水取りとはどんな法会なのかを説明するために、「悔過会」との比較をしているのですが、そのあたりは私には難しすぎて、さっぱり理解できませんでした。1-3「二月堂修二会の起こり」からやっと…という感じですね。
とにかく、お水取りで行われていることに関して、丁寧に丁寧に説明を加えていますが、その種類が膨大で、14日にわたる行はこんなに色んなことが行われているのかと驚きますね。その全体像を捉えるには本書は最適だと思います。
お水取りの歴史について触れた部分も面白いですね。修二会を始めた実忠和尚については没年も出身国もあやふやです。お水取りが始まったのが752年(天平勝宝4年)ですが、756年に描かれた「東大寺山界四至図」には二月堂がはっきりと描かれていないため、さらに後に始まったという説もあるのだそうです。
また、現在は二月堂に参籠する練行衆は11名と決められていますが、12世紀にはこれが28名という大所帯だったこともあり、あまりに多すぎて行に支障をきたしたため、26名以下に制限された時期もあったのだとか。
また、後半の7日間(下七日)の本尊である「小観音」像は、12世紀に現在のように二月堂に常に安置されるようになる前は、東大寺の印蔵に収められていて、修二会の際に堂内へ移動していたという説もあるそうです。この小観音さまの伝来のエピソードや、出御の作法などとても面白いですね。興味はつきません。
お水取りに関しては、この本以外も手にとったことはありますが、説明が学術的過ぎてついていけなくなることが多かったです。この本は平易な文章で綴られていますので、(内容は専門的ですが)言葉が理解できないことはありませんので、まだ読みやすいと思います。ただし、やはりほぼテキストなのでややイメージしづらい感はあります。
たった今、この文章を書きながら『NHK特集 奈良・お水取り [DVD]』を購入しましたので、この映像を観た後でこの本を読み返すと、また理解度はまったく違ってくると思います。またご報告します!