おべんとうの時間
日本の普通の人たちが食べている「お弁当」を通じて、色んな絆が垣間見れる良書です!
日本全国の普通の人々の「お弁当」を見せてもらい、それを写真に収め、お弁当にまつわるエピソードを聴くという企画。役立つレシピは掲載されていませんし、流行りのキャラ弁みたいな派手さもありません。しかし、お弁当を作った人と食べる人の絆が感じられるような、とても心温まる良書でした。
説明文:「全日空機内誌『翼の王国』の人気No.1エッセイ、待望の書籍化!本書はお弁当のレシピ本ではありません。阿部夫婦(夫・カメラマン/妻・ライター)が全国各地の手作り弁当を二人三脚で取材したフォトエッセイ集。海女、釣り堀経営、素麺職人、高校生、猿まわし、営業マン、大学教授……市井の人たちが照れながら見せてくれた手作りのお弁当。 食べながら語られるのは、仕事のこと、家族のこと、こどもの頃のこと…。そこには、お弁当の数だけ絆の物語がありました。本書を読むと、子供のころのお弁当が懐かしく思い出され、また、手作り弁当を味わいたくなる、そんなあたたかな一冊です。」
登場する方は、海女さんだったり、鳥取砂丘で馬車をひいていたり、自営業者や職人さん、学生さんだったり。39名の方が登場しています。その方たちのお弁当を通して、色んな世界が広がる、とても素敵な企画でした。
私自身、中学生の時には、毎朝母からお弁当を作ってもらっていました。ステンレス製の大きな弁当箱で、母もずっと会社勤めしていましたので、昨晩の残り物の簡単なものが主でしたが、今思うと大変なことをしてもらっていたんですね。当時はただただお腹が減る年代だったので、お弁当が美味しいとかまずいとか考えたことすらなかったのですが、この本を読んで、30年ぶりくらいで感謝の気持ちが芽生えて来ました(笑)
また、取材者側のエピソードもなかなか泣けますね。カメラマンの旦那さんが、普通の人の普通のお弁当の写真集を出したいという企画を思いつき、ライターの奥さん(最初は妊娠中。後に子連れで)と全国へ取材へ向かいます。開始当初は「翼の王国」の連載も始まっておらず、取材相手を見つけるのにも苦労したそうですが、温かい人たちの協力を得て、少しずつ記事が集まっていきます。ところどころでそんな逸話が紹介されているんですが、その大変さを思うと頭が下がる思いですね。
いずれにしても、お弁当の写真集というだけではなく、色んな人と人との絆が垣間見える素敵なドキュメンタリーに仕上がっています。『おべんとうの時間 2 (翼の王国books)』という続編も登場していますので、こちらも読んでみたいですね。