2012-12-17

若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語

世界的な江戸絵画コレクターのアメリカ人へのインタビュー。ただただ感動と感謝です!

伊藤若冲・長沢芦雪・酒井抱一など、日本の江戸時代の絵画の膨大なコレクション「プライス・コレクション」を築き上げた、アメリカ人ビジネスマン「ジョー・プライス氏」へのインタビューです。2007年に発売されたもので、インタビュアーは山下裕二教授。打ち解けた雰囲気が伝わってくるようで、プライス氏の穏やかな人柄にはますます好感がもてました。

この2006年には、若冲と江戸絵画を展示した「プライスコレクション展」が日本を巡回。伊藤若冲の名前を全国に知らしめました。その後もプライス氏のコレクションはたびたび日本へ貸し出され、今なお日本人から再発見され続けています。私はこの本が発売された当時は若冲の名前すら知らず、最近になってその魅力に取り憑かれたばかりです。テレビの特集などでは必ずプライス氏が登場しますから、その優しそうな笑顔は記憶に残っていましたが、本書を読んでますます大好きになりました!

紹介文:「若冲コレクター、ジョー・プライス氏の半生。若冲の絵のコレクターとして世界的に有名なジョー・プライス氏のこれまでの半生をインタビュー形式でまとめた一冊。「葡萄図」との出会いで啓示を受け、ついに日本で展覧会が開催されるまでの軌跡を語り尽くす。」

プライス氏は、アメリカの裕福な実業家の次男として生まれました。実業家として世界を飛び回っていたある日、ニューヨークの骨董屋で日本の掛け軸に出会い、作者も分からないまま購入します。それが江戸後期に京都画壇で活躍した伊藤若冲の『葡萄図』でした。その当時は、日本国内でもこの時代の絵画は顧みられておらず、ましてやアメリカに資料などありません。江戸美術に魅入られたプライス氏は、ほとんど情報も無いまま、自分の審美眼だけを信じてコレクションを増やしていきました。

後にこの時代の美術の価値が認められるようになりますが、プライス氏は自分の大好きな絵の価値を分かってくれる人間も少なかったため、ずっと寂しい思いをしてきたのだとか。それらの美術品を広く知ってもらうために、今でも貸出料などは受け取らないまま日本での展示会開催に協力していることも多いのだそうです。

海外の日本美術のコレクターというと、裕福な家に生まれた男が自分の好きなものを収集しまくる…というイメージを持ちますが、その正反対ですね。日本で打ち捨てられたようになっていた作品群を探しだしてコレクションし、私たちに紹介してくれるのですから、まさに恩人といえるでしょう。

本書では、山下教授のリードによって、プライス氏の人生とコレクションに対する愛情がたっぷりと語られています。画像も交え、分かりやすい注釈もつけられていますので、初心者でも分かりやすいでしょう。また、巻末には60ページにわたって、自らのコレクションの中から35作品を選び、プライス氏自身が解説をつけています。愛情がたっぷりと感じられて、思わず涙しそうになりますね。

ちなみに、2013年には東北3県の復興支援を目的とした特別展「若冲が来てくれました―プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」が企画されており、3月から仙台・盛岡・福島と巡回します。この企画が実現する陰には、こんな親日家のおじさんがいることをぜひ知ってほしいですね。


【若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語】の関連記事

  • 『イラストレーター 安西水丸』~急逝した安西水丸さんの作品集。独特のタッチ、とても好きです!~
  • 『「失われた名画」の展覧会』~失われてしまった西洋の名画たちを集めたユニークな美術本~
  • 『浮世絵に見る 江戸の食卓』~浮世絵に描かれた「食」の場面から見る江戸の暮らし。江戸が身近に感じられます~
  • 『かわいい絵巻』~絵巻物の「かわいい」を集めた一冊。真剣なのにゆるいものなど、日本人の伝統ですね!~
  • 『北斎娘・応為栄女集』~映画『百日紅』でも描かれた葛飾北斎の娘・お栄の作品集。夜の闇の描き方が見事です!~
  • 『分解してみました』~分解した機械部品を並べて、または落として撮影した不思議な写真集。機械部品って美しい!~
  • 『田中一村作品集[増補改訂版]』~奄美大島の風景を描き「日本のゴーギャン」と呼ばれた画家の大判画集。迫力あります!~
  • 『もっと知りたい田中一村―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)』~奄美大島を愛し「南の琳派」「日本のゴーギャン」と呼ばれた画家の作品を分かりやすく解説~
  • 『小林清親 東京名所図 (謎解き浮世絵叢書)』~「最後の浮世絵師」と呼ばれた小林清親の作品集。この時代独特の美しい風景が見事です!~
  • 『かわいい仏像 たのしい地獄絵』~快著「日本の素朴絵」の続編。不思議な仏像と素朴な地獄絵。愛らしいヘタウマの宝庫!~
  • 『百日紅 (上) (ちくま文庫) 』~葛飾北斎の娘・お栄を主人公に描く江戸風情。傑作!間もなく公開されるアニメ映画も期待!~
  • 『幻獣標本採集誌』~存在しない「幻獣」の標本をモチーフにしたアート作品集。手元に置きたくなる存在感!~






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ