「自分」を浄化する坐禅入門
集中力や自分への観察力を高める瞑想指南書。具体的で分かりやすい良書です
禅寺の住職であり、ウェブサイト「家出空間」の管理人、一般向けに座禅指導をしたり、多数の著作を記したりと、幅広い活動をなさっている禅僧・小池龍之介さん。彼が一般向けに行なっている「坐禅セッション」のお稽古プログラムの一部を紙面に再現したものです。その場では、シャワーのように説法を聞きながら瞑想を行うそうですが(本書の付属CDに収められています)、それを自宅でも再現できるような内容になっています。
私自身は座禅を体験したことはありませんが、日常の集中力を高めるためにも、そのエッセンスには触れたいと思っていました。著者の名前はどこかで見聞きしたことはありましたが、詳しい活動内容などは全く知りませんでしたので、本書を真っ先に手にしたのは全くの偶然でした。かなりクセはあるものの、とても具体的で分かりやすい内容ですね!ちょっとした驚きでした。
著者が提唱するのは、宗教的に行われる「座禅」よりも、より「瞑想」に近いものです。まず座り方の簡単な解説から始まりますが、それほど詳しく語られません。そして、ステップ1から「集中力」を高めるお稽古がスタートしますが、これが詳細ですごいですね!漫然と目を閉じて瞑想するだけではなく、どこに意識を集中させるか、どんな変化を感じ取っていくのか、意識がそれた場合はどうやって戻すのかなどが詳しく指導されています。
●一回一回、全く同じ呼吸は存在しない。呼吸が楽なのか苦しいのか、浅いのか深いのか、早いのか遅いのかなど、自らの感情の変化によって呼吸の風味も微妙に変化している。それを観察することが重要。
●体のどこかが痛むときには、その痛みに心を肉薄させて、「痛み・痛み・痛み・痛み・痛み」と、3~5回ほど心の中の言葉で念じる。
このように具体的です(一部を抜粋しているため著者の真意は伝わりづらいかもしれませんが)。
これを深めていくと、瞑想を通り越して「自己観察」となっていきます。これを繰り返すことで、「集中してクリアな意識状態である方が、本当は自分にとっていいことなんだ」と心が自然に覚え、日常生活をより律しやすくなるそうです。
ただし、この方の文体がかなり独特で、古風な日本語を現代の口語体で語る…という感じですから、それが気になる方は避けた方がいいかもしれませんね。そこさえクリアしてしまえば、とても分かりやすく実践的な瞑想指南書になっていると思います。
なお、本書は2009年の著作ですが、2012年3月に増補改訂版が発売になっています(CDは付属していないようです)。今ならこちらを探してみた方が早いかもしれません。