日本全国 獅子・狛犬ものがたり
神社に鎮座する「狛犬」の入門書。歴史や形状など分かりやすく解説されています
神社の参道や拝殿脇に鎮座する守護神「狛犬」について、その由来や形状の違いなどを解説した一冊。狛犬に関しての本は多数出版されていますが、どれもやや難しいものが多かったため、これまで敬遠してきましたが、この本は理解しやすかったです。
私は神社へお詣りに行くたびに狛犬の姿を写真に収めたりしてきました。足元に子供の獅子がいたり、玉に乗っていたり、細身だったりどっしりしていたりといった形状の違いは何となく分かっていましたが、私の知識はそこまででした。その違いがちゃんと分類されているので、理解を深める第一歩になったと思います。
今では、向かって右手に口を開けた阿形(あぎょう)、左手に口を閉じた吽形(うんぎょう)が配されるのが狛犬のスタンダードになっていますが、当初は、口を開けているのは「獅子」であって狛犬ではなかったのだとか。獅子=口を開ける・たてがみは巻毛・色は黄色、狛犬=口を閉じる・たてがみは直毛・色は白・角があると、全く別物で、後の時代に変化していったのだそうです。
本書では、こうした時代による変化を、狛犬発祥の地とされるメソポタミアからシルクロードで東へ伝わっていくところから解説していきますので、丁寧といえば丁寧ですし、興味のない方にはやや退屈かもしれません(個人的には楽しめました)。
また、滋賀県・大宝神社に伝わる一対の「獅子像」は、奈良時代に作られた貴重なもので、国の重要文化財に指定されています。さらに、戦前の官国弊社に置かれる狛犬のモデルともなり、この像を模してたくさんの狛犬が作られたなどの情報も面白いですね。東大寺・南大門に鎮座する、中国の石材を用いて彫られた日本最古の石造狛犬も、改めて注目してみようと思いました。
狛犬本もいろいろとありますが、初心者にも比較的分かりやすく書かれていましたので、入門書には最適でしょう。興味のある方ぜひ!
<メモ>こんな記述が。「相撲の開祖・野見宿禰にゆかりのある奈良県・十二柱神社には、天邪鬼ではなく四人の力神が支えている狛犬があるそうです。」後で調べます!