聡明な女は料理がうまい (文春文庫)
お料理を楽しむことを徹底的にアジテーションしてくれる、懐かしい私のバイブルです
ウーマンリブ運動などを展開していた作家・桐島洋子さんによる料理本です。1976年に発売されてベストセラーになった内容が、1990年に文庫化されたもの(今から20年以上も前!)。表紙には娘の女優・桐島かれんさんが登場しています。
美味しそうなレシピの紹介などもありますが、古い文庫本ですから、画像などは一切ありません。正直なところ、便利で親切なレシピ本に慣れてしまった今となっては、本書はそういった面では参考にならないでしょう。しかし、今読み返してみても、お料理を作ることに対するモチベーションがグングン上がりますし、ヤル気を起こさせるような絶妙なアジテーションをしてくれています。
簡単に要約すると、料理は知的な作業であり、とても楽しいものだ。男性的で自由な発想で挑めば、こんなに素晴らしくクリエイティブな作業は他にない…、という感じでしょうか。解説文にはこのようにあります。
「果断な決断力、大胆かつ柔軟な発想、ゆたかな包容力…。世に「男性的」といわれる資質こそすぐれた料理人の必要条件だ。それなのに男達が女を差別して「男性的」な世界から疎外するから、女はいよいよ女性化して料理がヘタになる。男まさりのいい仕事をしている人ほど料理の手ぎわがいい。すぐれた女はすぐれた料理人なのである。」
具体的なレシピよりも、お料理に対する心構えを見習いたくなるんですよね。冷蔵庫のあり物を使って、チャチャッと手早く美味しいお料理を作る快感を、私はこの本から学びました。
個人的な思い出話をさせていただくと、この本が文庫化された当時、私は大学生で一人暮らしの何年目かでした。貧乏でしたから、もっぱら自炊をして食費を浮かしていましたが、自分でお料理するなんて面倒で仕方なかったのです。「お料理なんて男のやることじゃない」くらいのことは思っていたかもしれません。しかし、この本を読んでから「お料理=クリエイティブな作業」として、かなり前向きに取り組めるようになったんですよね。そういう意味ではとても想い出深いです。
本好きな人間であれば、誰もが「人に勧めながら差し上げてしまって、いざ読み返したいと思ったら手元に無い。すぐに本屋さんに行って買い直す」という本があると思います。20代前半の私にとってのソレは、間違いなくこの本でした。
ただし、あくまでも当時の私にとって…です。今読んでみたら、やはりテキストだらけで読みづらいですし、内容的にもやや古臭い部分もありますから、お料理力アップの即戦力とはならないでしょう。さらに、古い文庫本のわりには、今現在、Amazonの中古品価格が千円を超えてる(!)ような状況ですので、あまり無理する必要は…と思います(笑)