2012-08-24
日本の暖簾―その美とデザイン
「暖簾(のれん)」の画像満載のビジュアル書。バリエーションの豊富さに驚きます
日本の「暖簾(のれん)」の画像をまとめたビジュアル本。画像メインのため、日本各地で使われている伝統的な文様が見比べられて、とても楽しい一冊になっています。老舗の伝統を守り伝える「京のれん」と、粋でいなせな江戸商人の心意気が感じられる「江戸のれん」、さらに全国の暖簾を地域ごとに紹介する「諸国のれん紀行」、最後には「京都の暖簾工房を訪ねて」というコーナーもあるなど、最初から最後までブレずにのれんづくしの内容です。
また、冒頭には「暖簾の基礎知識」といったコーナーもあり、とても興味深いですね。ひと口に暖簾といっても、半のれん・長のれん・水引のれん・日よけのれん・縄のれん・珠のれんなどの種類があるそうです。また、家紋や色についても特徴があり、分かりやすく解説が加えられています。
暖簾の歴史を遡ると、平安末期に描かれた「信貴山縁起絵巻」にすでに庶民の家の入口に布がかけられている様子が見られるとか。当初はもっぱら日除け専用のため無機質な白無地や紺無地でしたが、鎌倉時代になると商家の商標などが入り、識字率が高まった江戸時代には文字入りのものが登場したのだそうです。
デザインを見比べてみると、京と江戸では確かに傾向が違いますし(吊るし方も違うのだとか)、モダンデザインの柄も登場していたりと、様々なバリエーションが登場していることが分かります。
奈良の街中でも、奈良の歴史ある商家の軒先で暖簾が見られます。本書には、茶店「龍美堂」、茶粥「峠の茶屋」、奈良漬「森奈良漬店」、造酒屋「菊司醸造」、墨「古梅園」などが紹介されていました。今では老舗の商店でしか見られなくなっていますが、古都の風情を感じさせるアイテムとしていいですね。これからさらに注目してみたいと思います!