2012-08-11

バツイチおへんろ

38歳・バツイチのフリーライターの、ライトな「歩き遍路」エッセイ

38歳・バツイチの売れないフリーライターが、四国八十八ヶ所の歩き遍路を行ったエッセイです。著者さんには特に信仰心があるわけではありませんが、68日かけて88ヶ所の札所と、別格20ヶ寺を回っています。

彼女は、10年前に旅先で出会ったイギリス人と結婚し、1年ほど前に離婚したばかり。収入も乏しく、一時はパート生活などもしていましたが、一念発起してスペインの有名な巡礼道「サンティアゴ巡礼」900kmを完歩したそうです。そして、編集者さんからの依頼もあり、次は日本で四国八十八ヶ所霊場をまわることになったのだとか。単に歩くこと自体が目的なわけですから、大した予備知識もありませんし、納経も途中で止めてしまっています。

ツイッターでつぶやきながら、夜には宿でブログを更新しながら、そして時には雑誌の連載仕事もこなしながらの歩き遍路ですから、一日の移動距離は20㎞ほど。かなりゆっくりとしたペースで旅を続けています。この企画自体が「TVブロス」のモバイルサイトでの連載として行われたため、おそらく毎晩、iPod touch+ゴム製の巻けるキーボードを駆使して原稿を送信していたのでしょう。

こうした連載ものの常として、今日は何を食べた、誰とこんな話をした、天気が良くて助かったというような日記になりがちで、お寺の情報などはほぼありません。歩き疲れた夜に、詳しい資料に当たることも難しいでしょうから、ブログでの連載形式ではこうなりがちですね。その日にどこの札所をお参りしたのかすら書いていない日も多く、実際に歩き遍路をしようと思う方には、感じの良い宿泊先を探すくらいしか役に立たないと思います。

しかし、離婚や仕事、将来の不安などの共感ポイントが散りばめてあるため、つい応援したくなってしまいます。私としては、もうちょっと真面目にお参りしてくれた方が感情移入しやすいんですが、この本を手に取るような女性読者さんには、このくらいのライトさが丁度いいのかもしれません。

(ちなみに、この歩き遍路の途中、第六十番札所・横峰寺を目指す道中に遭難してしまい、警察が出動する騒ぎまで引き起こしているのがさらにアレですが…。)

お遍路に行ってみたい私のような自営業者にとっては、彼女のスタイルは羨ましくもあり、あまりのぬるさを批判したい気分になったり、かなり複雑です。軽い旅エッセイとして読めばそれなりに楽しめますので、気軽に読んでみてください。


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