奈良大和の隠れ古社寺
奈良の古社寺65ヶ所を紹介。新聞連載の書籍化で、読みやすく役立つ良書です!
2000年に朝日新聞奈良版に連載された「山と里の古社寺」に加筆修正を加えたもの。元記者さんお二方が、奈良の「隠れ古社寺」を巡っています。そう聞くとよくある内容に思えますが、もとが新聞連載だけにとても読みやすく、難易度も私には適度でした。図書館で借りてきましたが、読了後すぐにネットで購入手続きをしたほどです!
奈良県内には、観光的にはほぼ無名でありながら、地元の方にひっそりと護られた、魅力的な歴史や伝統を持つ社寺が少なくありません。そのセレクトは様々で、個人的にはすでに知名度があると思われる海龍王寺・喜光寺・般若寺・円成寺・龍蓋寺(岡寺)などが紹介されている一方で、名前すら聞いたことがない社寺も多数登場します。
例えば、「天理・桜井方面」では、和爾座赤坂比古神社・和爾下神社・長岳寺・伊射奈岐神社・兵主神社・檜原神社・大直禰子神社・高宮神社・志貴御県坐神社・笠山荒神が紹介されています。さすがに渋いラインナップですね!
ちなみに、全部で65あまりの社寺が紹介されていますが、私がお参りしたことがあったのはその半分の30ほどでした。まだこんなに素敵な社寺があるかと思うと、ワクワクしてきます。
本書は、元記者さんによる連載でありながら、紹介に際しては、ごく普通の参詣者として訪れて、その範囲で見聞きできる状況を伝えるために「関係者に直接当たって寺伝や社伝を詳しく取材するという方法を意識的に避けた」とのこと。このため貴重な寺宝を拝見したりしていませんが、一般人にも役立つ参詣ガイドになっています。また、お話を伺ったりすると、どうしても寺伝に遺された伝承などに囚われてしまいますが、文献にあたって冷静に判断しているのもいいですね。
全ての社寺は、見開き2ページずつ、小さめの写真を混ぜて紹介されています。歴史や建物の説明などが多く、堂内に入れないことも多いのか仏像の解説は少なめです。2002年の発行のため、1998年の室生寺五重塔が倒壊した台風被害に関する記述がつい最近のこととして何度も出てきますが、それ以外はそれほど内容に古さを感じることもありません。参詣のガイドとしても、ブログを書く際の資料としても利用できそうです。
どこででも手に入る本ではありませんし、読む人の知識量によってお役立ち度は変わってくると思いますが、興味のある方はぜひ探してみてください!