2012-06-14
入門 奈良絵本・絵巻
中世に作られた彩色入りの絵本や絵巻「奈良絵本」を一覧
現存する「奈良絵本」100冊の部分写真を集めた一冊。1ページに3枚の画像と簡単な説明が掲載されています。奈良絵本とは、室町時代中期~江戸時代中期にかけて作られた、手作業で作られた彩色入りの絵本や絵巻のこと。名前に奈良とありますが、これは奈良名物の「奈良絵」に作風が似ているということで、明治時代に名付けられただけで、主に京都で製作されたそうです。
本書では、6つの時代に分けて奈良絵絵本を紹介しています。初期の稚拙さを感じる絵柄から、次第に豪華絢爛に変化していきます。町絵師がほそぼそと作っていたものがヒットしたら、それを追うように量産する業者が現れ、市場が成熟したら有名な絵師が起用される、そんな流れは今も昔も不変のようですね。
題材については、この時代にお馴染みのものが多いようです。源平の合戦、源氏物語、謡曲や能で演じられたもの、有名な昔話、仏教的な説話、百人一首など、庶民に好まれた人気タイトルが並んでいます。最盛期の江戸時代初期には、「大仏の御縁起」という聖武天皇が大仏開眼するまでの話があったりして、なかなか面白いですね。
大量に作られて消費されていった作品だけに、とても華麗とは言えないものも数多く含まれていますが、当時の庶民の文化を知る上では貴重な資料でしょう。贅沢を言うと、それぞれの作品についてもう少しだけ詳しく見ていきたかったですね。また関連書を探してみたいと思います。