2012-06-13
柳宗悦の世界 (別冊太陽)
伝統的な日用的を「民芸」として再発見した先人の全仕事
20世紀初頭、作家ではない工人によって作られた伝統的な日用的を「民芸(民族的工芸)」として再発見したことで有名な「柳宗悦(やなぎむねよし)」の仕事をまとめた、別冊太陽の一冊。アンティークや木喰仏、大津絵、富本憲吉など、最近になって興味を持ち始めたいくつものものが、全て柳宗悦さんに繋がっていくため、入門書として読みました。このシリーズは画像も多めで分かりやすいですね。
柳宗悦さんは、民芸に関する活動が知られていますが、中心的人物として文芸雑誌「白樺」の創刊にかかわったり、棟方志功が世に出るきっかけになったり、世界的な工業デザイナー「柳宗理(やなぎそうり)」の父であったりと、その業績は一口で言い表せるようなものではありません。本書で大項目になっているものだけでも、これだけあります。
●陶磁器、漆工、和紙など、日本の民芸収集●英国の画家ウィリアムブレイク紹介●日本統治下の朝鮮半島の民芸の紹介と保護●誰も知らなかった木喰仏の研究●日本の民画「大津絵」の収集研究●戦前の沖縄の民芸研究●英国のフォークラフト「スリップウェア」の紹介●晩年に没頭した仏教美術の研究
それぞれのカテゴリーごとに、彼が蒐集して日本民藝館に所蔵された作品など、美しい画像入りで紹介されていますが、それぞれ惚れ惚れするような素朴な美が感じられます。久留米の小鹿田(おんた)の焼き物、瀬戸や丹波の簡素な日用雑器、蒔絵の入っていない漆器(塗分松皮菱椀!)など、ありふれた言い方ですが、意図しない素朴な美が感じられます。
今何気なく手にしている器や伝統工芸品は、こうした人たちに再発見されたものも少なくないでしょう。偉大な先人たちの地道な活動に、改めて敬意を表したくなりました。