2012-06-06

地獄絵 (ビジュアル選書)

生前にしっかり「地獄」を知る価値はあると思います

聖衆来迎寺(滋賀県大津市)が所蔵する「六道絵」をもとに、そこで描かれたシーンを丹念に見て、地獄とはどのようなものなのかをビジュアル多めで解説していく一冊です。

基本的な構成は、まずは見開き2ページで地獄などの各ステージ(?)の内容を紹介し、その後の数ページで、六道絵を拡大しながら解説していくようになっています。さすがに古い絵ですから、ビジュアル的な恐怖は少なめですが、その設定を読むとエグいことこの上ないですね。人々が「地獄に落ちたくない」と願ってきたのも当然の、つらい責め苦が延々と続きます。

ちなみに、最近、人気マンガ家・東村アキコさんの『ママはテンパリスト』の中で、「子どもを泣き止ませる絵本」として紹介されてから、『絵本・地獄 千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵』( http://goo.gl/gyKz3 )が売れ続けているそうです。私たちが幼い頃は、知らないうちに地獄のイメージがあって、それを恐れていたものですが、今のお子さんにもそれは有効でしょう。この絵本は読んだことはありませんが、トラウマにならないように読み聞かせるのはいいことなのかもしれません。

(※本書は2011年4月の発売なので、決してブームに乗った便乗本ではありません)

その内容は、まずは閻魔庁でのお裁きの様子が描かれ、次は地獄道・修羅道・餓鬼道・畜生道・人道・天道と、各レベルの解説があります。圧巻なのは、レベルに応じて計8種類もある地獄道でしょう。等活地獄・黒縄地獄・衆合地獄・阿鼻地獄と、4種類の地獄が、それぞれ10ページ近くも割かれて、丁寧に説明されています。

生前の罪状によって、いろんな地獄に振り分けられるのですが、そこでの苦しさはどれも並大抵のものではありません。これはすごいと思ったものだけ挙げてみます。

●他家の子どもを辱めた者は、鬼によって自分の子どもが陰部を責められる様子を見せられる。その後、自分の体をひっくり返されて、高熱で溶かされた銅を肛門に流し入れられる。銅は内蔵を焼きつくして口から出てくる
●男色をした者が落ちる地獄では、眼前に相手が現れ、見ているだけで体が熱くなる。それに耐えながら抱こうとすると、熱で体が砕け散ってしまう
●獄卒が白骨化した罪人に「活々」と唱えると赤子の姿で生まれ変わり、延々と責め苦は続けられる
●8種類の地獄の中で最下層にある阿鼻地獄(別名:無限地獄)では、その他の全ての責め苦を合わせたさらに千倍の苦しみがある。この地獄にたどり着くだけで、2千年もずっと落下し続けることに!

「何だそれ?」「ただのイジワル?」と思うような地味なものもありますが、そんな責め苦を延々と繰り返すのが地獄の醍醐味(?)です。死後、地獄へ落ちたりしないよう、普段の行動から気をつけましょう!


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