2012-06-04
月岡芳年の世界
最後の浮世絵師で、最初のイラストレーター。充実の作品集
幕末から明治にかけて活躍し、「最後の浮世絵師」とも「最初のイラストレーター」とも呼ばれる「月岡芳年」( http://goo.gl/KTRW , http://goo.gl/5JUfC )の画集です。178ページにも及ぶ大作で、お値段は1万円。図書館で借りてきましたが、お値段分の充実した内容でした。
月岡芳年は、幕末期に活躍した鬼才・歌川国芳の門下生で、歴史絵から美人画や役者絵、合戦絵など、様々な浮世絵を描いてきました。しかし、その中でも最も有名なのが、いわゆる「無残絵」と呼ばれる、血のしたたるシーンを描いたシリーズ『英名二十八衆句』です。江戸川乱歩や三島由紀夫など、著名人からも愛されました。グロテスクで生々しい絵ですが、独特の艶っぽさと怪しげな魅力があるんですね。
彼が活躍した時代は、幕末から明治にかけて。浮世絵は古い文化として廃れてきている頃です。こうしたインパクトのある作品を送り出すことが生き残りの手段だったのでしょう。当時は最も売れっ子の浮世絵師とされました。しかし、神経衰弱におちいって絵が描けなくなるなど、苦難の連続でもあったようです。
この他にも、今でも見かける機会の多い神武東征の一場面を描いた『大日本名将鑑』の神武天皇の絵や、妊婦を天井から吊るす鬼婆を画題とした『奥州安達がはらひとつ家の図』(当時は発禁処分を受けたそうです)などが有名でしょう。
月岡芳年の作品集としては、おそらく最も充実したものだと思いますので、興味のある方はまずは図書館で探してみてください。ただし、作品の大多数は流血シーンとは無縁の浮世絵ですので、グロ系画像がお好みの方には物足りなく感じられるかもしれませんので、あしからず。