芸術新潮 2012年 05月号 [雑誌]
「まだ村上隆が、お嫌いですか?」という挑発的な特集です
芸術新潮2012年5月号。大特集は「まだ村上隆が、お嫌いですか?」という挑発的なタイトルになっています。
私は、現代アートの知識は全くありませんので、村上隆さんというアーティストについては、「海外で評価されている」「オタク文化を芸術に利用したとして、一部から非難されている」このくらいの認識でした。しかし、この本でその歩み、言葉などを見ていくうちに、次第に好感を持つようになりました。いわゆる日本人が思い描く芸術家とは正反対のベクトルで、ビジネスとしての芸術を成り立たせようとしている方なんですね。
彼は、「オタク文化の搾取者」「商業主義者」などと批判されてきました。『芸術起業論』という著作があるくらいですから、もちろん商業主義者であり、それを隠しもしていません。
特集の冒頭から、カタールで展示されるために作成された、村上氏が描いた「五百羅漢図」が紹介されています(それも折込ページで全図が見られます)。毒々しいまでのポップな色調、人を喰ったような表情の尊者はカンフーに興じていたり、本来の五百羅漢図とはかけ離れています。その大きさは100メートル!スタッフやボランティアを合わせて、のべ200名以上が関わって完成させたとか。これだけの人間がかかわるというのも信じられないことですが、彼が目指すのは「現代の狩野派」のようなプロダクション製なのです。
デフォルメされた日本のアニメキャラのようなDOB君、お花にスマイリーな笑顔が書かれた作品、オタク文化をネタにしたフィギュア群、ヴェルサイユ宮殿にも飾られた巨大オブジェなど、その作品は様々で掴みどころがありません。
タイトルの「まだ村上隆が、お嫌いですか?」に答えるとするならば、「痛快です。もっとやれ!」というところですね。ただし、「その作品を手元に置きたいか?」と聞かれれば、「No」と答えるでしょう。その考え方には共感できる部分も多いですから、これからは注目してみたいと思います!