だいたい四国八十八ヶ所
宮田さんらしいぬるい歩き遍路かと思いきや、意外と真面目!
『晴れた日は巨大仏を見に』『四次元温泉日記』などぬるいエッセイを発表している宮田珠己さんの歩き遍路レポです。タイトルに「だいたい」とあるように、筆者が四国八十八ヶ所の巡礼へ向かったのは「一周してみたい・全部回ってみたい・いっぱい歩きたい」それだけの理由です。ろうそくやお線香、納め札や笠、杖までも省略してしまう簡略型巡礼で、決して信仰心から始まったことではありません。
しかし、意外とちゃんと周ってます。全ての札所の御朱印をいただき、全区間しっかり歩き通しました(8回の区切り打ち)。その間には、雨に負けて予想以上に連泊したりもしますし、心温まるお接待を受けたりします。交通量が多くて歩きづらい道に苦戦したり、遍路ころがしと呼ばれる難所が意外とイージーだと感じたりします。さらには、足摺岬はいい季節に歩きたいから…と、順番を入れ替えたりしますし、脱線して四万十川をカヌーで下ったり、シュノーケリングしたりもしています。
文章を読む限りでは、何とも簡単そうに見えますが、一日20~30kmくらいの距離を歩き続けなければいけないのですから、決して楽ではありません。当初は「信仰よりも観光、寺よりも道」であり、拓けた景色を見て感激していた筆者も、次第に色んなことに気づき、心境に変化が起こってきます。
四国を弘法大師さまゆかりの特別な土地と見るのがお遍路ですが、実際には後から作られた伝説も多く、お遍路道といってもほとんどがアスファルトの味気ない道だそうです。お遍路から派生した四国への幻想にどっぷりハマるか、拒絶するか。何日もかけて歩いてみることで、心は色々に揺れるんでしょうね。
また、ちょっと面白かったのが、年配の男性のお遍路さんはスピードにこだわるということ。難所を何時間で登ったとか、ここまで何日で来たとか、自分自身がまだまだ健康だということを再認識したいがために歩き遍路をしている方も多いのだとか。急ぎたくなる気持ちは私にもよく分かりますが、何かを見失っている感がありますね。いつかは歩き遍路をしてみたいと思っているだけに、このことは心に留めておきたいと思います。