2012-05-03
四次元温泉日記
「建て増しして迷路状になった温泉宿へ泊まる」面白い企画
変わったタイトルですが、主に「建て増しして複雑な迷路状になった温泉宿へ泊まる」ことをテーマとしたエッセイです。知らない建物を探検するのは楽しいものですし、それが古い温泉宿なら間違いなく楽しいと思いますが、よくもこんなニッチなネタを…と感心してしまいますねw
筆者が自ら作った館内図などを見てみると、古くからある本館、後から作った新館、呼び方次第の別館、さらにはスタッフ用の棟などの建物が、無秩序に増殖しているように見えるところも少なくありません。それら全てを渡り廊下で繋ぐため、斜めになったり平行に2本並んだりしますし、山間の宿ではここに高低差が加わり、ますます迷路度が高まります。
ただし、この本の著者は、以前読んだ『晴れた日は巨大仏を見に』(感想はこちら)の方で、いわゆる「ぬるい」タイプのエッセイを得意としています。あまり真剣に迷路状の建物を探検するわけでもなく、写真もかなり少なめ。同行者とのぬるいやり取りなどの比率の方が多いくらいですね。
さらに、こんな企画をスタートしたにしては、もともと温泉が好きではない(服を脱ぐのが面倒、お湯に入ってじっとしているのがヒマなど)というのですから、意味が分かりません!泉質に興味もないし、一泊の間に一回しか入浴しないとか、温泉宿には全く不似合いな方でした。しかし、この企画を続けていくうちに、ちゃんと温泉の良さに目覚めていきます。最初から最後までぬるいルポですが、そういうプラス側への変化が伝わってくるので、最後まで嫌味なく読み通せます。
かなり変わった内容ですが、気軽に楽しく読める一冊だと思います。