2012-05-01

万葉の旅〈上〉大和 (平凡社ライブラリー)

「万葉風土学」の第一人者、故犬養孝先生の代表作です

「万葉風土学」を提唱した万葉集研究の第一人者、故犬養孝先生の代表作です。万葉集に登場する万葉故地を全て訪れ、そこで万葉の息吹を感じることを重視していた方で、本書でも万葉歌に登場する土地を歩き、歌と背景、その土地の空気を解説しています(上中下とあり、これは上巻の「大和」編です)。

万葉集は全20巻、約4,500首の歌が収められており、その中で登場する地名は約1,200。大和の地名は、その四分の一の300もあります。奈良県内の万葉故地を訪ね歩くだけでも、大変なことですね。

1964年に発売された本が元になっているだけに、先生が歩いた場所の雰囲気も、すでに変わってしまっています。欄外に注釈があって分かりやすくなっていますが、「磯城郡大三輪町は、昭和38年桜井市に合併編入」「大和歴史観は、現橿原考古学研究所付属博物館のこと」など、歴史を感じさせる記述が多くていいですね。

万葉歌の意味の解説などは最低限ですが、その土地に行ったからこそ分かる道の寂しさや月の明るさが感じられるのが最大の魅力です。同じ月明かりを歌うにしても、東に山がある奈良の都は月の出が遅く、西に山が迫っている葛城などでは月の入りが早くなります。その土地でなければ実感できない感覚が、少しだけ理解できるような気がします。

最後に、メモ替わりに少しだけ。

●三ツ鳥居が有名な檜原神社ですが、この当時は「元禄の銘のある石灯籠二基をのこすだけ」。写真が掲載されていますが灯籠が簡素なしめ縄で囲われているだけです。現在の社殿などは、後に建てられたものだそうです。

●「春楊(はるやなぎ) 葛城山に 立つ雲の 立ちても居ても 妹をしそ思ふ」(巻11-2453 柿本人麻呂歌集)葛城の地を詠んだ歌ですが、万葉集の中で原文が最も短い歌なのだそうです。「春楊 葛山 発雲 立座 妹念」この漢字10文字が、31文字の和歌として成立するのですからすごいですね(笑)


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