2012-04-20
中西進と歩く万葉の大和路 (ウェッジ選書)
中西進先生ご夫妻が気ままに大和路を歩くのんびりした一冊
万葉集など古代史研究で知られる中西進先生の2001年のご著書で、先生ご夫妻とウェッジ編集者が一緒に気ままに大和路を歩き、万葉や古代に思いを馳せる、という内容です。良く言えば自由な雰囲気、悪く言えばテーマが定まっていない感はありますが、のんびりと肩肘はらずに読めますね。斑鳩・飛鳥・寧楽と歩いて、法隆寺や龍田越、甘樫丘、磐余、泣沢女神社、三輪山、元興寺などを巡っています。
もちろん、視点はディープで、平城京保存に尽力した棚田嘉十郎さんの銅像を見た後、すぐに棚田家のお墓がある空海寺へお参りしたりしています(奈良の大恩人ですが、晩年は極貧状態に陥ってしまい、病を得て失明。最終的に自刃してしまったという方です)。
また、東大寺で桜を眺めて、古代の言葉について、「生きること=息をすること」「死ぬこと=しなびること(水分がなくなること)」であり、桜の花はしなびたりせず、瑞々しいうちに散るからこそ日本人に愛されてきた、そんな説を展開しています。節々に興味深い考察が織り込まれていながら、気軽に最後まで読み通せる内容でした。