2012-04-01
千社札―二代目銭屋又兵衛コレクション
神社仏閣へ貼る「千社札」のコンパクトなフォトブック
神社仏閣へ参拝の印として貼る「千社札(せんじゃふだ)」。お寺などをを巡っている方にはお馴染みでしょう。この本では「二代目銭屋又兵衛コレクション」と名付けられた作品の400点を、文庫本サイズの本に収録し、見応えのある一冊になっています。
千社札のサイズは、一寸六分×四寸八分(4.8cm×15.2cm)と決まっており、当初は墨一色で描かれていました。後に多色刷りのものが一般的となり、広重などの有名な浮世絵師たちも手がけるようになったのだとか。
現在の千社札は、勘亭流や寄席文字で名前が描かれたものがほとんどで、それどころか自分でプリントアウトしたデザイン性のかけらも感じられないようなものも増えてきています。決してデザインの問題だけではありませんが、千社札を貼る行為自体を禁止している寺院も少なくありません。本来の意味合いも薄れていますし、個人的には、最近の稚拙な千社札であれば全面的に禁止して欲しいと思うくらいです。
しかし、過去の優れた作品を見ていると、まさに「粋」を感じます。自分の名前をひっそりと忍ばせる程度にとどめ、美しさを最優先させたものも多く、これでこそ納める価値のあるものだと思いますね。デザインに決まりごとはありませんので、人間・妖怪・昔話・小道具でも何でもあり。依頼主の仕事や名前などに合わせて、作者がインスピレーションを働かせているのが伝わってきます。サイズが限定された中で、和の大胆なデザイン遊びが繰り広げられているところが見所ですね。千社札について、他の本も読んでみたくなりました!