2012-03-14
平山郁夫・絹の道から大和へ―私の仕事と人生 (講談社カルチャーブックス)
シルクロードで有名な画伯が自らの作品などを振り返った一冊
シルクロードの風景を描いた一連の作品などで知られている故平山郁夫さん。その作品を年代別に紹介しながら、ご本人が製作過程などを振り返った一冊です。奈良の人間にとっては、薬師寺の玄奘三蔵院の巨大壁画でお馴染みですが、この本はちょうどその製作を行なっていた時期に発刊されたものです。
私はこれまで、氏の作品は目にしていたものの、このような本を手にとったのは初めてです。もちろん最初から画題にシルクロードを選んでいたわけではなく、初期の頃は仏教色の強い作品を発表していらっしゃいました(『仏教伝来』『求法高僧東帰図』『入涅槃幻想』など)。一般に知られているタッチとは違いますが、仏教誕生の頃の様子を幻想的に描いていて、これも素晴らしいですね。
その後、毎年のようにシルクロードの源流をたどって西域に分け入り、その風景を作品として発表していきます。入国も難しかった頃のことですから、人々の目には今以上に衝撃的な風景に写ったでしょう。そんな風景と並行しながら、藤原京や大仏殿、薬師寺や斑鳩の塔など、奈良に題をとった作品も数多く発表されています。
この本自体はかなり古いため、今でも見つかるかどうかは分かりませんが、奈良好きな方は、平山郁夫さんの作品集を手にとって見てください(図書館に必ずあります)。静まり返った古い京都の、乾いた空気が伝わってくるようで、本当に感動的ですよ!