寺社の装飾彫刻―宮彫り‐壮麗なる超絶技巧を訪ねて
まさに超絶技法!神社仏閣の建築装飾の傑作を集めた写真集
江戸時代から、神社仏閣の建築装飾として取り入れられるようになった、華やかな「建築彫刻」を集めた写真集。全国111の寺社から、まさに傑作と呼ぶべきものが700枚もの写真で紹介されています。
そもそも、寺社仏閣の建築彫刻は、江戸時代初期、あらゆる装飾技法を駆使した「日光東照宮」が造営されてから幅広く用いられるようになりました。流れとしては、安土桃山時代~江戸初期には華やかな彩色入りのものが、それ以降の質素倹約を求められた時代には素木のものが増えたのだそうです。しかし、有名な「眠り猫」を彫ったとされる名工・左甚五郎ですら、まだ実在の人物だったのか確定してないのだとか。仏像彫刻と比べて、スポットライトが当たることの少ないジャンルだったのです。
私のような関西在住の人間にとっては、至近距離に名刹が存在し、古建築も古の仏像も身近に感じています。しかし、このような寺社の華やかすぎるほどの建築装飾や、全く方向性は違いますが、素朴な円空仏などは近くには存在せず、東の方たちを羨むばかりです。
本書に収められている写真を見ていくと、四角四面だったはずの柱が、完全に昇龍になっているなどというのは当然で、板一枚にも丁寧に彫刻が施してあり、まさに「過剰の美」が感じられます。ある意味では病的と思えるような綿密さで、キッチュでサイケデリック。ガウディーの一部の建築物を見ているような気分にさえなりました。
彫刻のテーマも驚くほど様々で、木鼻が獅子や象になっていたり、力神が軒を支えていたりするのはもちろん、中国の「二十四孝」や、日本の昔話、庶民生活などを題材とした絵巻物のような世界も描かれています。さらには、日露戦争当時の軍人を描いたものまであるそうです。驚愕してしまいますね!
図書館で見つけてすぐに借りてきましたが、圧倒的な迫力で驚きました!お値段が5千円近くしてしまうので、気軽に買いづらいのですが、ぜひ手元に置いておきたくなります。