2011-11-25

幕末の修羅絵師 国芳 (とんぼの本)

異能の浮世絵師・歌川国芳の作品を解説した入門書

江戸末期に活躍した異能の浮世絵師・歌川国芳の作品を解説した一冊。武者絵・美人画・風景画・風刺画・春画など、様々な画題を描いた方だけに、その全体像を掴みづらいのですが、本書では分かりやすく解説しています。だいぶ古い本ですし、120ページに満たないためやや収録点数は物足りないですが、概要を掴むのには最適でしょう。

江戸末期、長い下積み時代を経て、名門の歌川一家の人気浮世絵に成り上がった国芳ですが、まさに「宵越しの銭は持たない」という江戸っ子気質を持つ親分肌だった反面、晩年は精神を病んでしまう一面もあったとか。そんな人柄も伝えられます。

この本にあった後輩絵師の歌川芳年と比較した一文が、国芳の仕事をよく表現しています。「“近代挿絵”としては芳年の方が分かりやすくて面白いだろうが、しかしそれでも、“絵画”としては、国芳の方がずっと優れているのだ」。もちろん下手なわけではなく、近代の西洋絵画の画風を取り入れても、国芳は国芳。全て味のある浮世絵になってしまうのが面白いところであり、本人の悩みだったのかもしれません。

もう一箇所、有名な国芳の金魚を擬人化した絵について、ディズニーのファンタジアと比較して、「結局、国芳には“女子供”の感覚がないのだ。全部“男”の感覚でやってしまう。どこまでいっても“鉄火”で、そこに“洒落っ気”はあるけれども、“ユーモア”はない」。まさにその通りだと思います!

…と、全然褒めてないですけど、歌川国芳の作品は見れば見るほど面白いですので、この本に限らずとも、図書館などでぜひ関連本を探してみてください!


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