金印偽造事件-「漢委奴國王」のまぼろし
国宝「漢委奴國王印」について、古事記研究の三浦佑之先生が贋作説を唱えた一冊。面白い!
57年、後漢の光武帝が倭の国の君主に与えたとされる「漢委奴國王印」。江戸時代に志賀島から偶然見つかり、現在は国宝に指定されています。古事記などの古代文学・伝承文学研究の第一人者である、三浦佑之先生が、この金印を贋作だったとする説を提示した、とても興味深い一冊です。
2014年秋、東博の「国宝展」にも出展された金印について、古事記などの研究者である三浦先生が扱っているのが不思議に思っていましたが、ようやく読めました。
学術的な調査なども不可能ですし、文献を丹念に当たって疑問を呈していくだけになりますから、決して贋作であることの証明にはなっていません。各所の書評で指摘されているような「陰謀論」に過ぎませんが、それを頭に置きながら読むと面白いですね。不自然なエピソードが一本の線になって繋がる楽しさがあります。
説明文:「一七八四年、志賀島(現在、福岡県)の農民・甚兵衛が田んぼの脇の水路から発見したとされ、日本史の教科書にも掲載されているあまりに有名な「金印」。これは、建武中元二年(五七年)に後漢の光武帝が同地にあった小国家の君主に与えた「漢委奴國王印」と同定されたが、じつは江戸時代の半ばに偽造された真っ赤な偽物だった。では、誰が、何の目的で造ったのか?鑑定人・亀井南冥を中心に、本居宣長、上田秋成など多くの歴史上の文化人の動向を検証し、スリリングに謎を解き明かす。」
贋作説を唱えたのは、決して三浦先生が初めてではありません。伝わっている発見の経緯からして、やや怪しげな点が混ざりますので(見つかった場所が特定できないなど)、過去にも同様の疑問は呈されてきました。
本書は、基本的に「確固たる贋作の証拠はない。でも、状況を考えると圧倒的に不自然でしょ?」という点を積み重ねて論を組み立てているため、決定打にはなり得ません。「倭」ではなく「委」の文字を使用しているなど、贋作としては不自然な点もあります。
実証するすべがない以上、ドキュメント風エンターテインメント小説の域を出ませんが、それでも十分に楽しめる内容でした。ネタバレになりますが、以下のサイトも合わせてご覧ください。
asahi.com:志賀島「金印」に偽造説再燃 地元の反応は複雑-文化一般-文化芸能
国宝「漢委奴国王」の金印:本物? それとも江戸時代の偽作?
漢委奴国王印 - Wikipedia
衝撃の「日本3大偽物国宝」に認定されたのは、金印、頼朝、政宗(絡み) - 歴史ニュースウォーカー