桓武天皇―造都と征夷を宿命づけられた帝王 (日本史リブレット人)
平安遷都と蝦夷征討を成し遂げた天皇の事績を解説。人物像が分かりやすく理解できます
平安遷都を実現し、奈良から都を移した桓武天皇の事績を紹介したもの。山川出版社の「日本史リブレット」シリーズの一冊で、100ページに満たない薄めの本ですが、大づかみにするには最適でした。奈良好きな私は、これまで歴史の本を読んでも、平安時代のものまで手を伸ばすことは少なかったため、入門にはちょうど良かったです。
説明文:「平安遷都を実現し、蝦夷勢力を撃破した桓武天皇。しかし、百済系渡来氏族の母をもつ桓武は、出自の点で大きな弱点を抱えており、その立太子と即位を支持しない勢力が少なくなかった。発足当初の桓武政権は、権威を認められなかったがゆえに、造都と征夷の二大事業を推進することが宿命づけられたのである。桓武が自身の弱点をバネにして、難事業を成功に導くとともに、積極的に政治改革を進めて、傑出した帝王と呼ばれるにいたる過程をみてゆく。」
私の桓武天皇のイメージは「平安遷都を実現して、千年の都の礎を築いた」くらいでしたが、「東北地方へ出兵し、領土を大きく拡大した」というのも桓武朝の業績でした。反対を押し切って遷都に踏み切ったのも、当人の母が百済系渡来氏族という低い身分だったため、当初は天皇として相応しくないとされていたことが大きな理由となったのだとか。
また、「政争と粛清を繰り返し、晩年は怨霊に悩まされた」というのも事実ですが、これも母の身分が低かったことの影響も大きかったようです。井上内親王・他戸皇太子・氷上川継・早良親王などの影に怯えながら玉座につく、孤独な帝王像が目に浮かぶようです。
桓武天皇の周辺は、父の光仁天皇(その父の志貴皇子)、息子の平城天皇も興味深いですから、もう少し詳しく知っておきたいですね。
そういった意味でも、最初の一冊としてこの本を選んだのは正解だったと思います。とても分かりやすい内容ですが、この時代の基礎知識がまったく無いと理解しづらいでしょう。奈良時代の大まかな流れを把握してから手に取ると、かなり楽しめるでしょう!