
ミドリノオバサン
カリフォルニア在住詩人の室内園芸エッセイ。緑を世話して増やすだけなのに憧れます!
詩人であり、日本の古典を題材にした著作も多い伊藤比呂美さんが「室内園芸」について書いた、2005年発売の一冊。いとうせいこうさんの『自己流園芸ベランダ派』(書評はこちら)に収録されていた対談を読んでさっそく手にとってみましたが、少しずつタイプが違って面白いですね。最後まで楽しく読了しました。
説明文:「子育てが一段落して、のめり込んだものは室内園芸。鉢植は200鉢を超え、まだまだ増えていく。生命のいとおしさがあふれる、イラストいっぱいのエッセイ。『マイン』『熊本日日新聞』『日本経済新聞』連載等をおさめる。」
伊藤比呂美さんは、カリフォルニア州在住で、旦那さんと娘さんたちと暮らしています。一戸建ての自宅の室内と露地植えで園芸を楽しんでいらっしゃるのですが、主な興味対象は「観葉植物」です(私も同じです)。いとうせいこう氏が花を愛でるタイプなので、それぞれスタイルが分かれますね。「部屋を緑で埋め尽くしたい」願望もある方らしく、その点もとても共感できます。
アマリリス・アマンダ・ゼラニウム・ベゴニア・サンスベリア・ポトス・アジアンタム・モンステラ・ベンジャミン・ハートカズラなどが登場し、特にサトイモ科の植物に対する偏愛があるようです。また、メダカやウサギなど、植物以外について触れたエッセイも数篇収められています。
また、空気の乾いたカリフォルニアですから、多湿な日本とは全く環境が違うのも面白いところ。とにかく、どの植物について書いていても「カイガラムシ」の記述がついてまわります。これは、真っ白い粉虫・茶色の穀虫の総称で、葉や茎にびっしりと取りついて樹液をすすり、植物を弱らせていく天敵です。日本でも特に珍しいものではありませんが、環境の違いなのか、カリフォルニアでは室内に置いてあるありとあらゆる植物にはびこり、それを退治して回るのが日課になっているほどで、手に負えなくなってカリフォルニアの乾燥した屋外へ出すといつしか消える(または植物が枯れる)のだそうです。恐るべし!
そんな難しさはあるものの、日本では室内で大事に大事に育てられているような、南国原産の種であろうと、荒っぽく露地植えしても平気で雑草化して繁茂するのだそうです。環境が違うから当然ですが、ちょっとおもしろいですね。
さまざまな媒体での連載記事を加筆修正した後にまとめたものなので、ややまとまりに欠ける感はありますが、シンプルなイラスト入りで読みやすかったです。植物を愛し、しっかりと(時には厳しく)世話をする。ただそれだけのことを楽しんでいる様子が伝わってきますので、興味がある方はぜひ!