2012-10-12
図説 古代出雲と風土記世界
古代の出雲をビジュアル豊富に解説した一冊。1998年発売ですが充分に役立ちます
古代の出雲について、ビジュアル豊富に様々な側面から検証した一冊。古代出雲や古事記などについての研究者・瀧音能之さんが監修を努め、その道の有名研究者の方々が集結して各章を担当なさった豪華仕様です。難易度は中レベルですが、画像が多めで読みやすいですね。
1998年に発売されたものですので、さすがにデータが古い可能性はありますが、神庭荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡から大量の銅剣・銅鐸が発見され、出雲は銅製祭器の一大拠点だったことが認識された直後ですから、この点はかなりのページ数を割いて詳しく解説されています。
その一方、出雲大社に関する章もありますが、拝殿の後ろ側(出雲大社境内遺跡)から鎌倉時代の巨大な宇豆柱が発掘され、実在が信じられて来なかった高層神殿の存在がほぼ確定したのが2000年からですので、この点については触れられていません。他にもこの10年ほどでいくつかの発見はあったはずですから、その点だけは割り引いて読むといいですね。
内容は、古代の出雲、記紀神話、青銅器、風土記について、国引き神話の解説・カンナビの山々・寺と新造院・市・神事、出雲大社と熊野大社など。特に出雲国風土記についての解説が興味深く、例えばお寺の記述では「教コウ寺」という寺院名と「新造院」という10カ寺の名前が見られるのだとか。同名のお寺がこんなにあるはずはありませんから、作りかけだったり、何らかの制度変更の途中だったりするのかもしれません。風土記に関しては、適度なレベルの読みやすい本が少ないので、このような内容の本は役に立ちますね。
間には「出雲の原風景」というコラムも入り、古代と現代の出雲の姿が色んな角度から伝わってきます。内容の割にはとても読みやすかったですから、興味がある方はぜひ。