太平記〈上〉―マンガ日本の古典〈18〉 (中公文庫)
さいとう・たかを先生作。複雑な時代も漫画なら理解できます
中公文庫から発売されている「マンガ日本の古典」の一冊で、御大さいとう・たかを先生の作。上中下の3巻にわかれていて、鎌倉幕府の滅亡から、南北朝の動乱、室町幕府の二代将軍の義詮が没するまでを描いています(3巻まとめての感想です)。
私自身は、日本の中世あたり(鎌倉~室町時代)はほとんど知識がなかったため、少しでも分りやすい本を…と探していたところ、この漫画が見つかりました。ずっと積んであったのですが、先日、鎌倉へ行ってきてその関連本を読んだ流れてページを開いてみたら、かなり楽しめました。
もととなった太平記についてよく知らないので、比較はできませんが、漫画版は人物の書き分けもちゃんとしていて混乱しません。ストーリーも分かりやすく描かれていると思うのですが、いかんせん敵味方が入り乱れてゴチャゴチャになる時代ですから、ややこしいのは確かです。最終的に勝者になるはずの足利尊氏も含めて、南朝北朝や幕府側に分かれて組んだり戦ったり。きっと私のレベルでは、この漫画でなければ理解できなかったと思います(笑)
大雑把な流れとしては、最初から最後まで戦いばかりが続き、重要人物が一人ずつ脱落していきます。最後まで生き残っていくほど人物的な魅力が半減していくようで、潔く死を賜る楠木正成公や北畠顕家公など(大塔宮護良親王はそれほど魅力的な人物に描かれていません)が美しく映ります。長い間一進一退の攻防が続けられたこと、武家社会から公家の社会へ転換しようとする建武の新政が難しかったことなど、その当時の空気感も伝わってきて参考になりました。この時代の入門書としては最適ですね。
ちなみに、このシリーズは全32巻あって、横山光輝、いがらしゆみこ、水木しげる、竹宮恵子、黒鉄ヒロシ、里中満智子(敬称略)などの豪華作家陣が、各年代や物語を描いています。書き手によって差がありそうですが、横山光輝先生の「平家物語」、竹宮恵子先生の「吾妻鏡」なども読んでみたいと思います。