2012-05-09

古代史紀行 (講談社文庫)

時刻表マニアで乗り鉄の元祖・宮脇さんは古代史ファンでした

『時刻表2万キロ』などたくさんの鉄道関係の著作を遺した、時刻表マニアであり乗り鉄の元祖ともいうべき宮脇俊三さんが、日本とアジアの古代史の関連地を巡った一冊です。この方は、有名すぎるほど有名な鉄オタさんでしたが、古代史にまで興味をお持ちだとは知りませんでした。中央公論の編集長だった方ですが、サラリーマン時代に「日本の歴史」シリーズの担当をやったりしたことから歴史好きになったのだそうです。

この作品は、雑誌連載した「日本通史の旅」の中から、奈良時代までをまとめたものです。魏志倭人伝の時代から始まり(対馬)、奈良時代末期に活躍した道鏡や大伴家持が流された土地(下野と越中)を訪ねて終わります。奈良や京都、滋賀、九州などに丁寧に足を運んでいるのはもちろん、韓国や中国にまで行っています。奈良に来た時には、シルクロード博の開催中(酷評なさってます)だったり、中国行きの直後に天安門事件が起こったりと、時代を感じさせる描写も面白いですね。

また、さすがは時刻表マニアだけに、この古代史の旅全体が丁寧で綿密です。電車やバスを使って現地入りし、徒歩やタクシーで史跡を巡るのですが、徹底的に「年代順」にこだわります。つまり、いくども歴史の中心となった奈良などは、そのたびに訪れているという、贅沢というか無駄が多い行程をとっているんです。それだけ頑張っていながら、「せっかく行ったのにそれだけ?」と驚くほど素っ気ないくだりがあったりしますが、その丁寧さには驚きますね。

扱っているテーマは幅広く、対馬・出雲・金印・聖徳太子・壬申の乱・藤原不比等・長屋王・武蔵国分寺・坂上田村麻呂・道鏡など、思いつく関連の土地全てに行っているといっても過言ではないでしょう。歴史的な背景や個人的な感想など、淡々と綴っていらっしゃいますので、決して派手さはありませんが、古代史好きな方であれば楽しく読めました。20年前の様子を想像してみるだけでも面白いですね。


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