2012-04-07
日本書紀 塗り替えられた古代史の謎
日本書紀を歪めたのは持統天皇!(黒幕は藤原不比等)
古代史に関する著作を精力的に発表なさっている関裕二さんの2005年の著作。日本書紀に関しては、「日本書紀は天武天皇を賛美するため、史実をあえて歪曲している」という説が採られることが多いですが、筆者はこれを天武天皇ではなく、持統天皇(黒幕はもちろん藤原不比等)としています。持統は天武と仲睦まじいと見せておいて、実は父である天智系の血筋を復活させようという魂胆があったと。その証拠として、大海人皇子を賛美する目的であるのに関わらず、日本書紀ではその出自すら明らかではないなどの論が展開されていきます。
その目的などはネタバレになりますので伏せますが、やはり面白いですね。神功皇后・邪馬台国・神武東征・トヨ・崇神天皇・出雲・蘇我氏・尾張氏・壬申の乱・万葉集・聖武天皇・宇佐八幡など、重要なキーワードに触れながら、結論まで一気に読ませてくれます。
筆者の論は、現代の通説とは大きくかけ離れている部分も多いですし、資料が欠けている部分を想像で補っている箇所も少なくありません。この手の本を読む際にはその点に注意が必要なのですが、古代史を調べるにつれて疑問に思うポイントが、次々に説明され、腑に落ちていく感覚があります。
私などではその正否は判断できませんが、凝り固まった古代史観が、視点を移動させることでこんなにも姿を変えるのかと、カタルシスさえ感じます。センセーショナルな内容を含むため、トンデモ本扱いされることも少なくないと思いますが、間違いなく面白いですね。古代史に興味がある方はぜひ!