2012-03-18
葛城の王都・南郷遺跡群 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
古代豪族・葛城氏の拠点「南郷遺跡群」について分かりやすい一冊
古墳時代に権勢を誇った古代豪族・葛城氏が拠点としていた「南郷遺跡群」について分かりやすく解説した一冊です。「遺跡を学ぶ」シリーズの79冊目。ディープな古代の世界が身近に感じられる素晴らしい企画ですね。
葛城氏とは、金剛山の麓を拠点として(現在の葛城市・御所市など)、古墳時代前後にヤマト王権を支えた大豪族で、主に外交面で活躍したとされています。その始祖とされる葛城襲津彦(かつらぎのそつひこ)は神功皇后に命に応じて、韓半島に出征して活躍。御所市にある巨大古墳・室宮山古墳は彼の墓だと考える説が多いようです。葛城氏は、後に安康天皇を暗殺して逃げ込んだ眉輪王をかくまったため、大初瀬皇子(後の雄略天皇)に攻められ、没落していきますが、古代の大豪族であったことには間違いありません。
南郷遺跡群とは、金剛山・葛城山の斜面に沿うようにして広がっている、巨大集落(王都という言葉を使っています)であったことが判明しました。そのスケールがとんでもなくて、王の高殿(極楽寺ヒビキ遺跡)を中心として、祭殿(南郷安田遺跡)、水の秘儀が行われた場所(南郷大東遺跡)、鉄や塩の生産拠点、職人たちの住居跡、多数の墓所など、広大な集落跡が発掘されています。
これらの発掘の結果を、決して専門的になりすぎず、多様な説を紹介しながら調査結果を見せてくれますので、とても分かりやすいですね。巨大な遺跡だけに、順番に見ていくだけでもドラマ性が感じられます。考古学という地味めなテーマですが、このシリーズで身近な遺跡の回から手にとってもらえば、もっと楽しくなると思います!