2011-12-09
もっと知りたいはにわの世界―古代社会からのメッセージ (アート・ビギナーズ・コレクションプラス)
プリミティブな「埴輪」たちを初心者にも分かりやすく解説
プリミティブな造形に心惹かれる「埴輪」たちを、分かりやすく分類・解説した一冊。歴史区分ごとに、埴輪の意味や造形がどのように変遷していったのか、またどこにどんな形で祀られたのかなど、埴輪初心者にも理解しやすい良書でした。
私自身、周囲が古墳だらけの奈良県民なので、古墳の成り立ちなどは興味を持っていましたが、奈良の古墳から出土する埴輪は、円筒形のやや地味なものが多く、これまでほとんど注目してきませんでした。しかし、生前の家をそのまま埴輪で表したようなものが登場するだけではなく、少し時代と場所を移して、関東以北では大量の埴輪を意味を持たせて配置し、まるで群集劇のようなシーンを作っていたのだそうです。
人物でも身分や職業ごとに様々なタイプが作られ、動物(馬犬鶏犬猪魚牛鹿など)などもバリエーションが豊富になっていく様がよく伝わってきました。
ちなみに、埴輪が誕生したきっかけとして語られる、「垂仁天皇の世、殉死を無くすために野見宿禰が埴輪を作ることを提唱した」というエピソードは、根拠が薄いとのこと。日本では古墳の周りから殉死の痕跡がほとんど見つかっていない、人物埴輪・馬型埴輪が作られるのは比較的後の時代になることなどの理由から、後に土器制作などに携わった土師氏が祖先を称えるために作った話と考えられているそうです。知らなかった!