2017-09-19

消しゴムはんこの仏さま

愛らしい消しゴムはんこの仏さまを多数収録。親しみやすく味がある文章も◎!

仏さまを愛らしくデフォルメした図像を、消しゴムはんこの作品とした「仏はんこ」の作品集であり、仏さまについてのわかりやすい解説書であり……という一冊。

作者は、私の知人でもある、消しゴムはんこ作家「nihhi(にっひ)」さん。数年前からTwitterやFacebookなどで作品を拝見していて、「いつか本としてまとまったらいいのに」と願っていましたが、こうして書籍化されて嬉しい限りです!

内容紹介 「仏さまってなんだろう」と日々考えながら小さな消しゴム板に仏さまを彫り続けている著者が、ほっこり愛らしい印影と分かりやすい解説で72尊をご紹介いたします。仏さまにまつわるエッセイや、消しゴムはんこ(シンプルなお地蔵さま)の作り方も掲載。巻末には、トレースしてお使いいただける原寸図案を11点収録しました。小さな消しゴムはんこを通してたくさん仏さまに出会える、ユニークで心なごむ「仏さまガイド」です。

出版社からのコメント
本書では、かわいらしいお姿とやさしいお話で、仏さまとその世界について紹介しました。「仏さまのお話は、実は誰にとっても自分事」「仏さまに出会うことは、自分と、世界と新しく出会いなおすようなこと」…。仏さまのことを知ると、「すべてがつながっていて、それぞれが活かし合っている大きな世界」が身近に感じられます。また、無心に消しゴム板を彫ることで、雑念から解放されて心が調うなどの効果も。仏像が好きな方、消しゴムはんこが好きな方はもちろんのこと、仏教に興味を持っている方、そして何となくお疲れ気味な方にも手に取っていただきたい、心がふわっと楽になる一冊です。
「内容紹介」より


とはいえ、内容は「消しゴムはんこの彫り方」がメインではありません。愛らしい図像を用いて、親しみやすく仏さまの特徴などを解説する、どちらかというと「わかりやすい仏さま入門書」という内容です。

また、このテキストが、いい感じに力が抜けていていいんですよね。著者のnihhiさんご自身も、ちょっと掴みどころのない飄々とした雰囲気の方なんですが、そのイメージ通りの素敵な文章です。仏さまと近すぎず遠すぎず、畏まりすぎもせず、時に本質をつく鋭い言葉があったり。



ひとつ、深いところの「おなじ」に気づけば、浅いところの「ちがう」も認められる。ひとつ、小さなつながりに気づいていけば、大きなつながりにも気づく。

そこにはとても大きな肯定があります。仏さまというのは、とにかく「OK」と言ってくれている。常にその声は響いているのですが、私が普段ちょっと忘れているだけなのかも……。本来宇宙は仏でできている。仏100パーセントなわけです。なかなかそう実感できなかったとしても、仏さまは変わらずに、既にあるんです。

P14「仏さまと出会う」より


可愛らしい仏はんこの作品たちとともに、言葉が静かに心にしみてきます。仏教的な単語なども出てきますが、全体的にとても平易に、親しみやすく仏さまの世界に触れられる一冊だと思います。「この本に登場する仏さまに会いに、お寺さんへお参りしてみる」というのも楽しいでしょう。

たくさんの方に手にとってほしい一冊でした!ぜひ!




『消しゴムはんこの仏さま』(日貿出版社)の表紙。愛らしく描かれ、彫られ、押された仏さまたちが並びます!


『消しゴムはんこの仏さま』より、nihhiさんの「仏はんこ」の作品と原版が写ったページ。やわらかな表情の童子のような仏さまは、みなどれも愛らしく、細かい線まで消しゴムはんこで彫られたものかと思うと、私のような不器用な者は驚くばかりです!


仏さまの中でも「如来(にょらい)」を説明したページ。同じお釈迦さまの姿を写しているんですが、いろんなパターンがあることがわかります。このページでは、お釈迦さまの生い立ちや仏さまの手の形(印相)についてなど、わかりやすく解説されています


如来のお仲間たちとなる「五劫思惟(ごこうしゆい)阿弥陀如来」と「見返り阿弥陀如来」。こうした像は、原寸か125%の拡大サイズで掲載してあるため、コピーすれば消しゴムはんこの図案としてそのまま使用できるようになっているとか


興福寺の八部衆をモチーフにした(であろう)「阿修羅」と「迦楼羅(かるら)」。阿修羅の切なげな表情もいい具合にデフォルメされて再現されていますし、人ではない異形の仏である迦楼羅が、やはり人からは遠い表情をしていてとても素敵です!


第3章「仏さまを彫る」では、初心者でも消しゴムはんこに取り組めるように、用意する道具や彫り方なども解説されています。巻末には「仏さまはんこ図案集」もついていますので、仏はんこデビューもできます!興味のある方はぜひ!


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