獅子と狛犬
MIHO MUSEUM「獅子と狛犬 - 神獣が来たはるかな道」の図録兼作品集。見応えたっぷり!
2014年秋、『MIHO MUSEUM』で開催された企画展「獅子と狛犬 - 神獣が来たはるかな道」の図録兼作品集です。展示された142展がすべて収録されています。
最近よくある一般書店にも流通するタイプの展覧会図録ですね。興味がありながら見そびれていた展示だったので、こうして後からでも観られるのは嬉しいですし、「行っておけば良かった」と後悔してしまうような充実の内容でした。
説明文:「荘厳で逞しく、時に獰猛、時に優美な神獣をめぐるひとつのはるかな物語。神社の入口に鎮座し、すでにわれわれの風景の一つに溶け込んでいるこの神獣(狛犬)は、西アジアやエジプト周辺から、はるばるユーラシア大陸を横断してきた悠久の文化の発露であった――。日本初公開となるロサンゼルス・カウンティ美術館所蔵の木造狛犬や、春日大社、薬師寺所蔵の国宝、重要文化財、円空や木喰作の獅子・狛犬をはじめ、東北から中国地方まで、日本列島各地に残され今も祀られている獅子・狛犬を中心に142作品を一挙掲載。元来日本に生息しない獅子が、ローマやエジプト、インドなどを悠久の時をかけて越え、日本に到来し、どのようにしてわれわれの風景に溶け込むほどになったのかをたどる。」
社寺の守り神として定着している獅子と狛犬ですが、その発端は西アジアにあり、大陸をゆっくりと東へ伝わってきました。もともと獅子が住んでいないエリアに入ったころから、変質していきます。古代西洋で造形されたものは、古くてもリアルさが感じられますが、ある時点から少しずつデフォルメが進んでいくんですね。
MIHO MUSEUMは、古代ローマなどのオリエンタルな文化財を多数所蔵する美術館のため、獅子が描かれ始めた時代のものも多く掲載されています。そこから中国を経て、日本の狛犬という形で定着するのですから、流れの壮大さに目眩がしそうですね。
狛犬についても、時代別にたくさんの作品が掲載されています。初期のものは、春日大社、薬師寺に伝わる国宝のもの、次第に力感が増していく、鎌倉時代・室町時代のものなど、彫刻として次第に変質していくのがわかります。
あばら骨が浮き出ていたり、力強かったり、ころころと丸顔だったり。後の時代には陶器製や石の彫像も多く作られたりします。見比べると個性があって面白いですね。
この図録だけでも十分に楽しめますが、やはり本物をこの目で観ておきたくなります。「博物館や美術館はライブが一番」ということがあらためて思い知らされました(笑)