名文で巡る国宝の十一面観音 (seisouおとなの図書館)
和辻哲郎、亀井勝一郎、白洲正子など、十一面観音についての名文を収録。読み応えあり!
十一面観音や弥勒菩薩など、国宝に指定されている仏像について書かれた文章について、それぞれの仏さまごとにまとめたシリーズの一冊。和辻哲郎さん、亀井勝一郎さん、白洲正子さんなどの文章は読んでいますが、それ以外の方のものはあまり記憶にありませんでしたので、こうして並行して拝見できるのは面白いですね。
説明文:「今なお読み継がれる名著だけでなく、絶版本や稀少本からも多数収録しました。国宝所蔵の寺への「旅の手引き」や「県別地図」「仏像の見方」などのページも充実。いままでにない「古くて新しい」古寺・名刹ガイドブックです。」
本書で取り上げられるのは、日本で「国宝」に指定されている7体の十一面観音像です。
奈良の室生寺・法華寺・聖林寺、滋賀の向源寺、京都の観音寺・六波羅蜜寺、大阪の道明寺。六波羅蜜寺の像など、通常は一般公開されていない秘仏も含まれているため、このすべての方たちとお会いするのはなかなか難しくなっています。
奈良の仏さまについては、書き手も多士済済で豪華です。先に名前を挙げた方以外にも、佐多稲子さん、陳舜臣さん、杉本苑子さん、会津八一さん、永井路子さん、立原正秋さんなど、名文が並びます。
しかし、秘仏の六波羅蜜寺像や、やや知名度で劣る道明寺像となると、それほどたくさんの書き手がいらっしゃらないのか、前者は津田さち子さん、後者は井上靖さんの、それぞれ短めの文章が掲載されているのみでした。こういう点からみても、奈良の仏さまの特別さが感じられます。
それぞれの描写を観ていくと、やはり和辻哲郎さんの「古寺巡礼」の描写はずば抜けていますし、亀井勝一郎さんの「大和古寺風物詩」、白洲正子さんの「十一面観音巡礼」も、先人とはまた違った視点があって面白いですね。
仏像好きな方は、写真集を手にする機会は多いと思いますが、こうしたエッセイで読んでみると、また違った印象があります。やや難しい表現も混ざりますが、ぜひ手にとってみてください!