ヴォーリズ建築の100年―恵みの居場所をつくる
近代建築家ヴォーリズの作品をまとめた一冊。教会建築から大丸大阪心斎橋店まで多彩です!
明治末期に英語教師として来日し、数々の西洋建築を手がけた「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ」(Wikipedia)の作品をまとめた一冊。建築活動100周年を記念して開催された展覧会の図録として作成され、2008年に一般発売されました。
前半は写真中心、後半は解説文が掲載されていますが、写真にも詳細な解説がつけられていますので、一般的な図録のような読みづらさはありません。本として読みやすい構成になっています。
本書でも後半の解説で触れられていますが、たくさんの優れた建築をのこした建築家ヴォーリズだけではなく、さまざまな側面があります。
「近江兄弟社の創立者の一人としてメンソレータムを日本に普及させた」「プロテスタントの伝道師として活動」「戦前に帰化して華族の令嬢を娶った」「終戦直後、マッカーサーと近衛文麿を仲介した」など。
建築家としては、滋賀県内の小規模な建物から始まって、関西学院や神戸女学院(2014年に国重文指定)の諸建築、軽井沢の別荘建築などを手がけました。素材も木・煉瓦・コンクリートなど、何でもあり。ヴォーリズ建築事務所の創設者として仕事にあたっているため、さまざまなタイプのものを作っています。
個人的に印象が強いのは、間もなく取り壊されてしまう「大丸大阪心斎橋店」です。1922年に建てられたもので(御堂筋側は1933年)、天井やエレベータ付近のくどいほどのアールデコ様式の連続は、見るたびに目眩がするほど。他のヴォーリズの作品とは毛色が違いますが、唯一無二のものでしょう。
本書では、建築物の大きな写真と設計図などの資料を合わせて紹介しているため、とても興味深いです。今ならまだ作品がたくさん残されていますが、それも次第に減っていくでしょう。見に行くなら今ですね!