岩崎平太郎の仕事: 近代・奈良の建築家
吉野出身の近代建築家・岩崎平太郎の仕事をまとめた一冊。吉野駅・畝傍高校などが残ります
吉野郡下市町の出身で、奈良県下で初めて民間の建築事務所を開設した建築家「岩崎平太郎」の仕事をまとめた一冊。自邸から見つかった約200点の図面や資料をもとに、足跡を追っています。
明治以降の奈良県で建てられた建築としては、長野宇平治の奈良県庁舎、片山東熊の奈良博物館などが知られていますが、岩崎平太郎の名前は、偶然この本を手に取るまで知りませんでした。大正・昭和初期に活躍した武田五一、亀岡末吉などの下で仕事をしており、主に図面を引いたり、実務的なことに携わっていたことから、名前が表に出ることもなかったのだとか。
説明文:「未公開の豊富な図面・資料と現存の建築作品を比較し検証。寺社建築・数寄屋建築・民家・アールヌーボー・セセッション…、東西の意匠の粋を胸らす建築美。関西に開花した近代和風建築の世界。」
代表的なものを挙げていくだけでも、まだ現存している建物が少なくありません。
奈良県知事公舎、佐保会館(奈良女子大学同窓会館)、畝傍中学校校舎(畝傍高等学校)、天理教敷島大協会、南都銀行の各支店、吉野鉄道の駅舎(吉野駅・吉野神宮駅)、吉野銀行の各支店(五条支店・高田支店など)、奈良県下の小学校(長柄小学校・治道小学校など)、森野旧薬園の知止荘、阪本仙次別邸の白雲荘など、個人の和風建築も。
私のような素人には理解できない点も少なくありませんが、どれも奈良らしさを感じる建築物で、リストアップして観てまわりたいですね。
本書では、現存しているかどうかはもちろん、現存していないものでも当時の古写真を掲載してあったり、発見された図面が載っていたりするので、観ていてとても楽しいです。お値段はそこそこしますが(3,800円)、奈良の図書館などを探せば見つかると思いますので、興味がある方はぜひ!
■参考記事
「岩崎平太郎」という建築家の発見│建築史家・川島智生
ディープな吉野の歩き方 > 岩崎平太郎の建築を巡る
佐保会館 : レトロな建物を訪ねて