野仏の見方―歴史がわかる、腑に落ちる (ポケットサライ)
雑誌サライのポケットサイズ別冊「野仏」。色んな野仏や石塔を分かりやすく解説しています
雑誌サライのポケットサイズ別冊シリーズ「野仏」。旅先や街角で野の仏さまや石塔を見かけても、意味が分からないものが多いですが、本書は携帯しやすいサイズで分かりやすく解説しています。2003年に出版されたものですが、今でもまったく古びていませんね。
説明文:「路傍に、池のほとりに、野辺に、佇む野仏たち。なぜか和み、心を解放してくれる彼らを徹底研究。散歩の、小さな旅の、“お供”にゼヒ!知的探求心を満足させる、小さな発見の書。」
道端で見かける野仏といえば、彫像のもの・文字を刻んだものなど、沢山の種類があり、男女2体が抱き合った形で表される「道祖神」などが有名です。大黒天などの「甲子塔」、弁財天などの「巳待塔」や「水神」、三十三番など巡礼の結願を記念した「巡拝塔」、梵字を描いた「板碑」、馬頭観音や不動明王、地蔵や山の神など、驚くほどの種類があります。
中でもよく見かけるのが「庚申塔」でしょう。道教の「三尸(さんし)説」に基づいた日本独自の民間信仰(奈良町の庚申堂などが有名です)で、特定の日に寝ずに朝を待つ風習がありました。そうした行事の記念碑として建てられたものなのだそうです。その姿はさまざまで、青面金剛や三猿の彫像、猿田彦の文字だったりしますが、すべて同じ目的のものなのだとか。知らなければ別物と思ってしまうでしょう。
また、これと似たような風習による「月待塔」というものもあるとか。これは江戸中期から流行した行事で、特定の月齢の晩に当番の家に集まり、月の出を待つのだそうです。その月齢は、十六夜・二十二夜・二十六夜など。熱心に祈るというよりは、仲間内の会合を楽しむという宴会的な性格が強かったとか。そんな風習があるなんて、初めて知りました。
月待塔は、その記念碑として建てられたもので、如意輪観音や勢至菩薩の彫像だったり、十六夜などの文字が刻まれたものがあるそうです。
普段は何気なく見過ごしている野仏や石塔にも色んな意味がありますから、じっくりと見ていくと面白いでしょうね。また、巻末には野仏散策のオススメの場所として、長野・安曇野、奈良・柳生街道が紹介されていたりします。
内容もとても分かりやすいですし、ポケット版なので持ち運びも便利ですから、この本を片手にお散歩してみるのもいいですね!