建築デザインの解剖図鑑
暗渠・坂道・和風建築など、街歩きが楽しくなる「ブラタモリ的」な雑学を集めた実用的な一冊
タイトルには「建築デザイン」とありますが、ざっくり言えば「ブラタモリ的」な、街歩きが楽しくなる雑学的なものを集めた内容です。前半は町並みについて、後半は建物などの建築物について。適度に深めで広めですから、この本の内容をある程度把握しておけば、お散歩が楽しくなることは間違いないでしょう。
説明文:「江戸・明治・大正・昭和、時代のデザインが分かる。普段、何気なく見ているまちなみ、道路、河川、建物も、いにしえの人々の知恵や努力の結晶がカタチ=デザインとして残っていることが多いのです。本書はそのデザインの読み解きかたを建物はもちろんのこと、場末、窪地、人工的な洞窟、湧水、坂道、暗渠、水路、路面電車、ガード下、屋台、お地蔵さんまで、オール図解で分かりやすく解説しています。読後には身近なものの見方が必ず変わるはず!タモリさん的な知識が満載の一冊です。」
●Chapter1「地形を読み解く」 橋詰広場で推理するまちの歴史・1本の竿が主張する水辺の権利・隠された水の路の痕跡を探せ・富士塚は庭師の腕の見せどころ など
●Chapter2「まちなみを探る」 隅田川の復興橋梁は意匠に注目・路地の居心地よさの秘密・横丁にただよう闇市の香り・暗闇の洞窟にいる弁財天 など
●Chapter3「建築探訪のススメ」 木の建物を石に変える擬洋風建築・遊郭跡のカフェー建築を探せ・和洋折衷は中流家庭の憧れの結晶・家印のもつ暗号を解読せよ など
●Chapter4「細部のこだわり」 瓦の文様はまじないのサイン・華麗なうだつの本当の顔・戸袋で一目瞭然 大工の技術・レンガが語りかける近代化の跡 など
●Chapter5「まちに出よう」 事前調査でまち歩きのイメトレを・身体1つで何でも測る
それぞれ適当に抜き出してみましたが、こうした町の細部に注目してみると、どれも本当に面白いものです。前半は東京で江戸の名残を探すようなものも多いため、地方在住の人間にとってはやや馴染みが薄いですが、坂道や暗渠など、町に潜む様々な痕跡をたどって楽しむことには変わりはありません。
すべての項目が見開き2ページずつ、イラストを多用して解説されていますから、とても読みやすいですし、実用的ですね。街歩きの際にバックに忍ばせておきたくなります。ただし、それぞれの記述は短めですから、特定の情報を(例えば橋梁についてとか)掘り下げる方にとっては、物足りない感があるかもしれません。
個人的には、後半の和の建築について解説したところがツボで、商店建築の店蔵造り・塗屋造り、長屋の変遷、土壁の種類、竹垣の結び方による格式の違いなど、興味深い項目がたくさんありました。興味のある方はぜひ!