陰陽師 (1) (Jets comics)
陰陽師・安倍晴明の活躍を描いたコミックス。全13巻で、前半は文句なしの傑作!後半は…
夢枕獏さんの小説『陰陽師』を原作として、岡野玲子さんが漫画化した作品です。全13巻。連載開始が1993年とのことですから、今からだいぶ前の作品ですが、内容はまったく古びていません。平安時代を生きた陰陽師・安倍晴明(921年~1005年)が、怨霊や魑魅魍魎と相対する様子が活き活きと描かれています。
説明文:「平安の都では、奇妙な出来事が次々と起きていた。巨大な蜘蛛が牽く車が姿を現し、妊婦が、たてつづけに腹を裂かれて殺された。そんななか、顔にできた瘡が突然しゃべりだした平貞盛に晴明と博雅が呼び出される。それらは、やがて都を滅ぼす恐ろしい陰謀へと繋がっていく…。注文の新人漫画家、睦月ムンクによる陰陽師シリーズの傑作長編が今始まる! !」
なお、私は原作も読んでいませんし、映画も観ていませんので、そちらと比較はできませんが、少なくとも「原作も映画も観てみたい」と思わせるだけの熱気はありました。岡野さんの絵も素敵ですし、迷信や怨霊、呪術、怪異がはびこる平安京の人々の姿が鮮やかに描き出されており、歴史好き・妖怪好きな方は必読でしょう。怨霊の親玉である菅原道真公も素敵です!
しかし、私個人の感想としては、物語の前半はものすごく楽しいです。短編を積み重ねていくスタイルですが、どれもワクワクしながら読めます。また8巻では、雨乞いのため全国の水の社を参拝して周るという回ですが、東大寺・お水取りの水が送られる若狭から、龍穴神社・丹生神社などをめぐっていきます。奈良好きな人間にとっては嬉しいルートで、楽しく読めました。
しかし、10巻のあたりからすっかりついていけなくなりました。それまで平安テイストあふれる怪しい活劇が続いていたのに、突如として観念的になり、晴明がどこへ向かっているのか意味が分からなくなります。「戸惑った」という感想がぴったりですね。
原作を読んでいる方も同じような感想をお持ちのようで、ネタバレも含まれますが、興味がある方は(ネタバレも含まれますが)以下のページなどを読んでみるといいかもしれません。
●岡野版陰陽師は何故あそこまで暴走してしまったのか - 空風
●陰陽師 (13) (Jets comics)(最終巻のレビューが物語ってます)
全13巻ありますが、採点するとすると、前半は文句なしに満点です。しかし、後半はページを追うだけで精一杯で、途中で何度も投げ出しそうになったほどです。原作を読んだ後、勇気が出たらもう一度最後まで読みなおしてみたいですね(笑)