仏像の表情 入江泰吉写真集
入江泰吉さんの「仏像の表情」が見える写真集。どの仏さまか当てるクイズとしても楽しい!
奈良を中心に、数多くの優れた仏像写真を遺した写真家・入江泰吉さん。彼が撮影した作品の中でも、顔部分のアップを中心に、タイトルのように「仏像の表情」がはっきりと見て取れる写真を主に集めた作品集。昭和39年に発売されたものを再編集し、2011年に復刻したものです。
説明文:「陰影の美を求めた写真家による不朽の名作を47年ぶりに完全復刻! いまでは撮ることができない「迫力」の構図におさめられた至高の仏像写真集。京都・奈良・大阪・和歌山の名刹に安置された仏像から選りすぐりの作品を収録。」
本書に収録されている仏さまは、奈良を中心に京都や大阪のものも含めて、約130躯。巻頭に数ページ分のカラー写真がある以外は、すべて白黒写真です。その大半が、仏像の表情を捉えたもので、一部に背中や手先などのものも混じっています。
当然のことですが、改めてお顔の表情だけに注目してみると、それぞれ個性がありますね。私などは全体像から仏像を見がちですが、同じようなお姿の阿弥陀さまであっても、表情はそれぞれ違いますし、撮影方法やコンディションによっても雰囲気は変わって見えるのでしょう。よくある表現として、「穏やかな慈悲の表情」などと言ったりしますが、その中でも色んなニュアンスがあることが分かります。
私は、ここに掲載されたほとんどの仏さまにお会いしたことはありましたが、途中から「この方はどこのお寺さんの仏さまだろう?」と、クイズのような形で読んでみましたが、これもなかなか面白かったです。見慣れているはずのお顔でも、極端なアップになったり、大きさが把握しづらかったり、照明の具合が違ったりすると、それだけで意外と見分けがつかないんですよね。
そんな中でも、明らかに見間違えようのない眼力を備えている、新薬師寺・薬師如来坐像はすごいと思いました。あの目の部分をちらりと見ただけですぐ分かるというのは、なかなか他の仏さま(特にお薬師さん)にはないでしょうw
また、足元に踏まれた邪鬼があったり、燈籠の羽目板や仏殿の天蓋についた菩薩、線画で描かれたものなども収録されていて、入江さんが幅広い作品を遺してくださったことが分かります。とても美しくて楽しい写真集ですので、機会があればぜひ手にとってみてください!