ぼくらの近代建築デラックス!
人気作家お二人が近代建築を巡り歩く対談集。入門書として、ガイド本として最適です!
作家の万城目学さん(大阪生まれ・京大卒)と、門井慶喜さん(群馬生まれ・同志社大卒)。このお二人が、大阪・京都・神戸・横浜・東京の近代建築を見て歩いた模様を、対談形式でまとめたもの。2010年ごろに雑誌『オール読物』誌上で連載されていた内容を単行本化したもので、2012年11月の発売です。
各都市にある、それぞれのオススメの物件を5件ずつ挙げて順番に巡っていく、という流れなんですが、ド定番なものからちょっと意外なチョイスがあったりして、建築好きにとってはとても楽しい内容でした。
説明文:「カドイの薀蓄にマキメが突っ込む、ユニークな建築入門。近代建築をこよなく愛する人気作家二人が、大阪・京都・神戸・横浜・東京の現存する名建築を訪ね歩き、その魅力を語りつくしたルポ対談集。写真も見応えばっちりの豪華オールカラー!各都市ごとのマップもついて、建築散歩のおともに最適の一冊になりました。」
例えば、初回の大阪では(この回だけは12軒)、旧シェ・ワダ、大阪市中央公会堂、難波橋、高麗橋野村ビルディング、新井ビル、堂島薬師堂、大阪府庁本館、大阪城天守閣、旧第四師団司令部庁舎、芝川ビル、大阪農林会館、綿業会館と回っています。
大阪が誇る美麗な近代建築から、ウルトラモダンなお堂「堂島薬師堂」や、それを近代建築ととらえる発想はなかったという「大阪城天守閣」など、意外なセレクトがあっていいですね。建築家についてのウンチクも分かりやすい程度で披露されていますので、最初の入口としてもいいですね。
建物の画像がそれほど多くない(そして小さめ)なのは残念ですが、フルカラーですし、簡単なマップも掲載されていますし、ガイド本としても役立つでしょう。これを片手にめぐってみたいですね。
なお、私は万城目さんの著作をほんの少しだけ読んだことがある程度でよく知らないのですが、『プリンセス・トヨトミ』の取材として建築を見て回ったり、売れない無職時代の思い出話が出てきたり、その人柄が現れているのも面白いです。この連載が始まる当初は辰野金吾さん(東京駅舎・奈良ホテルなど。画像検索)の名前くらいしか知らなかったそうですが、次第に渡辺節さん(綿業会館・商船三井ビルディングなど。画像検索)に惹かれていったそうです。
一方の門井さんは、もっと詳しい!まだ拝読したことはありませんが、気になる方になりました(笑)
なお、巻末の対談で「役に立ったガイドブックを紹介する」というコーナーがあったので、メモ代わりに名前の上がったものを書きだしておきます。
・小学館『近代建築散歩』シリーズ(宮本和義、アトリエM5著)
・講談社『日本近代建築大全』東日本編・西日本編(米山勇監修)
・青幻舎『大大阪モダン建築』(橋爪紳也監修)
・朝日文庫『建築探偵』シリーズ(藤森照信著)
・鹿島出版会『日本建築家山脈』(村松貞次郎著)
参考にします!