棟梁たちの西洋館―文明開化の夢とかたち
明治の棟梁たちが和の技術で作り上げた「擬似西洋建築」。不思議な美しさがあります
明治から大正時代あたりに日本建築の棟梁たちが作り上げた、擬似西洋風・開化式などと呼ばれる洋風建築を紹介する一冊。日本の近代化遺産などを取り続けている写真家さんの著作で、2004年に発売されたやや古い本ですが、面白く読めました。
説明文:「文明開化とともに広まった洋風建築。中でも棟梁たちが作った西洋館が面白い。彼らが持ち前の腕とセンスを生かして作り上げた建物には、随所に独創的アイデアが光り輝いている。西洋館を覗いてみれば文明開化の時代が見える。」
明治時代の初期、中央の大きな洋風建築物は海外からやってきた外国人技師たちが手がけました。そんな洋風建築のブームが全国に広がっていく中で、地方の役場や学校なども洋風にすることが求められましたが、そこまで外国人技師の手が回りません。そこで、これまでは神社仏閣を手がけてきた大工の棟梁たちが、その外観を真似るように、独特の和洋折衷の建物を作り出していきます。
レンガやコンクリートの新素材や、柱を減らせるトラス式などの新技術には目もくれず、これまでの日本的な技術で見かけだけを洋風にするんですからすごいですね。凝り性な職人気質の棟梁たちは、現代にも残るものすごい建物を、自分たちの技術のみで作り上げたのです。漆喰で大理石の柱風のものを作るなんて朝飯前なんですから、本当に驚きますねw
本書では5つのパートに分けて、全国の29の開化風の建物を紹介しています。
●役所・病院(済生館病院@山形、新潟運上所@新潟など)
●学校(中込学校@長野、登米小学校@宮城など)
●ホテル(日光金谷ホテル@栃木、箱根富士屋ホテル@神奈川など)
●宗教施設(紐差天主堂@長崎、教会尾山神社神門@石川など)
●邸宅(土井八郎右衛門邸@三重、盛美館@青森など)
※地元の奈良県からは「日本聖公会 奈良キリスト教会(奈良市)」と「宝山寺 獅子閣(生駒市)」が掲載されています
ちょっと驚くような和洋折衷っぷりの建築物も多く、全国を見て回りたいですね。表紙にもなっている「済生館病院(山形市)」などは、ピンク色っぽい外壁で、円形の中庭が備えられた可愛らしい建物で、何とも言えない魅力があります。いつか実際に訪れてみたいと思います。
いずれも大きな写真が掲載されていますが、画像が白黒だったり、やや掲載点数が足りない感じだったりと、完全に満足できるボリュームではありません。この本で知ったものを、ネットや別の本で調べるという使い方が正しいでしょう。
Amazonでも中古本しか手に入らないようですが、興味がある方は探してみてください!