国宝建築巡り日記 津々浦々ひとり旅
全国の「216件」の国宝建築物を巡った日記。全制覇ゲーム的に挑まれています
現在、日本全国には「216件」の国宝建築物があるそうです。途中で中断も挟みながら、12年もかけてそのすべてを回った方の記録です。
件数で見るとそれほど多くないように思えますが、国宝建築物は東北から九州までの全国に点在しており、交通の便も良くないところが多いものです。筆者はサラリーマンとして勤める合間を見ながらの旅ですから、決して簡単なことではなかったでしょうね。
説明文:「「日本には国宝建築っていくつあるんだろう?」――サラリーマン生活のかたわら、趣味の旅行中、ふとそんな疑問がわいた。「そうだ! 全部見てみよう!」――そして足掛け12年、216件(2011年4月現在)制覇! そのすべてを写真におさめた著者が、あなたにプラスワンの旅を紹介する、「人生」と「旅」を味わえる一風変わった記録紀行文。」
本書は、基本的には筆者の個人的な日記です。私も国宝建築には興味がありますし、出来るものなら全国を回ってすべて拝見してみたいと願っています。しかし、筆者とのスタンスの違いもあり、内容に入り込めない部分も少なくありませんでした。
まず、筆者は公共交通機関を利用するケースが多いため、事前に念入りにコースを決めて、その通りに無駄なく行動することに喜びを見出すタイプなんでしょう。「ロスしてしまった」「手早く済ませた」などのコースをこなしている記述が、それぞれの建築物の感想などと同じくらいの量もあるんですよね。また、せっかく訪れた先でも、上手く写真を写すことに対することに意識が向きすぎている印象があります。
全制覇のためのチェックポイントと考えれば、それはそれで楽しいんだとは思いますが、ただのゲームの過程を見せられているようで、いまひとつ共感できませんでした。
また、せっかく撮った写真も、日記と同じページ、もしくは項目の最後にまとめて掲載してくれれば嬉しいのですが、ほとんどの建物は画像がありません。もうちょっと上手に編集してあれば、この日記ももっと価値のあるものになったのに…と思います。
…とはいえ、この本は「文芸社」さんから発売されているものですので、おそらく自費出版されたものなんでしょう。そう考えれば、多少の不完全さがあるのも仕方ないのかもしれませんね。
もちろん、面白い発見もいくつもあって、私もすでにお詣りしている滋賀県・三井寺に「新羅善神堂」という国宝建築があるのもまったく知りませんでしたし、四国八十八箇所の札所やその近辺にも国宝建築はあるんですね。そういった気づきがあって、旅心をそそられますね。決して強くお勧めはしませんが、こういった旅日記がお好きな方は探してみてください。