2012-08-19

よくわかる仏像の見方―大和路の仏たち (アートセレクション)

奈良の有名な仏さまたちを、西村公朝さんが分かりやすく面白く解説してくれます

天台宗僧侶であり、仏像彫刻家であり、仏像に関する分かりやすい著作を多数手がけられている「西村公朝」さん。本書では、奈良の代表的な仏像を取り上げて、その特徴などを平易に解説しています。

登場する仏さまは、法隆寺の百済観音像・救世観音像・釈迦三尊像、東大寺の不空羂索観音像・執金剛像・四天王像・仁王像など、代表的なものが中心です。また、浄瑠璃寺は吉祥天女像ではなく阿弥陀如来像(九体阿弥陀)であったり、伝香寺の地蔵菩薩像が取り上げられていたりと、やや変わったセレクションもありますが、基本的には奈良の有名な仏さま22躯(四天王や十二神将は1つと数える)を紹介しています。

本書の解説文に、「仏たちの姿はなぜそれぞれに特有のものがあるのだろうか。なぜ多くの人の心を惹きつけ、思わずこうべをたれ、祈る気持ちを人の心に喚起するのであろうか。」とありましたが、まさに西村さんの仏像本にはこうした視点が感じられます。造仏技術や歴史的背景ばかりにとらわれず、信仰の対象として仏さまと向かいあうスタンスが伝わってくるんですよね。

例えば、唐招提寺の盧舎那仏像の右手について、「水かきのような縵綱相(まんもうそう)のある手は、仏が衆生を水ももらさぬように救う存在であることを表している。光背からふさわしい化仏を選んで、この右手の中指と親指で、私たちのほうへポンとはじいて飛ばしてくれる」こんな描写があります。水かきについて触れるのは珍しくありませんが、指で背後の化仏をポンと弾いて飛ばしてくれるとは!イメージが広がりますね!

同じく唐招提寺の千手観音像の項目で、手が千本ある像と四十本ある像(ともに合掌する真手は含まない)との違いを述べて、「四十本の像は現世、今拝んだ瞬間にご利益をもらえる。それに対し、千本の像は、過去・現在・未来、三世にまたがってご利益がある。すなわち、過去に犯した罪を帳消しにし、現世と未来をずっと守ってくれるというのである。」このような解説も他ではあまり見られません。

ビジュアル多めで見ているだけで美しいですし、それでいて解説も充実しています。入門書として最適なのはもちろんのこと、ある程度他の本を読んでからでも新鮮に楽しめるでしょう。図書館などで見つかると思いますので、ぜひ探してみてください!


『<$MTEntryTitle$>』より

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