壊れても仏像―文化財修復のはなし
仏像ブームの今だからこそ読みたい仏像・文化財修復の裏話
仏像修復に携わる著者による、仏像・文化財修復の裏話が垣間見れる一冊。仏像ブームと言われる昨今ですが、表立って登場しない仏像の現状が分かります。筆者は、美術院国宝修理所などに勤めた後、NPO法人「古仏修復工房」を設立し、関東で仏像修復を手がけていらっしゃいます。国宝級の仏像が多い関西とはまた違った、地域で守られているような仏さまのお話が多く登場しているのがいいですね。
本書の前半は、初心者向けに仏像の素材や種類の解説に充てられ、やや物足りない感はありましたが、後半部分は他の本では読めない内容も多く、とても面白いですね。仏像をプラモデルに例えたりするのは珍しくありませんが、仏師の方がいわゆる「魂を抜いた」状態の仏さまにどう感じているのかなどのエピソードが興味深かったです。例えば、日本人形を開眼供養したらそれは仏像になるのか、今現在作られている仏像は数百年後に文化財として認められていくのかなど、専門家があえてそんな話題に触れているのが面白かったですね。
制作年代によって壊れやすさが違う、体内にネズミが住み着いている、過去の修理の際に人間の都合で別の仏さまに作り変えられている、修理の際に出たホコリも捨てずに保管する、制作年代を割り出す年輪年代測定法の話、赤外線機能付きのビデオカメラ(発売中止になったもの)を使用している話などなど、とても面白い内容でした。
国から文化財指定を受けている仏さまを守っていく大変さは、地元のお寺さんの直接聞けたり、マスコミでもかろうじて取り上げられたりしますが、地方こそ大切な仏像を守っていく苦労があるはずです。その裏でこんな方々が活躍なさっているかと思うと、より身近に感じられるようになりますね。文章も内容もとても分かりやすいですし、仏像がお好きな全ての方に読んで欲しい一冊です。