古典不要論への反撃!?書評劇場
万葉学者・上野先生の古典・歴史中心の書評本。興味深い本がいっぱい!参考になりました!
万葉研究者・上野誠先生が、読売新聞に連載していた書評記事をまとめたもの。
「現代社会において、古典作品を学ぶ必要性とは?」とある生徒(国文学科)からの質問を受けたことに対する回答といった意味合いをふくめたタイトルで、古典教師の本音を綴ったエッセイなども収録されています。
「生きるためには古典なんかいらない?しかし、如何に生きるかと考えはじめたとたんに古典が必要になってくる!」
とはいえ、本書に掲載された書評はどれも素晴らしく、刺激的でしたから、このタイトルが内容を分かりづらくしてしまっているのが残念です。単純に書評本として優れていて、読み終わったころには付箋だらけになってました(笑)
説明文:「読む楽しさを伝える、古典と歴史の読書案内。今や、抱腹絶倒の書評家として名をはせる著者の真骨頂!読売新聞掲載の書評をまとめ、古典教師のホンネを綴ったおもしろうてやがて悲しきエッセイも収録。書物と対話し、生への思索を深めてきた思考の軌跡がここに。」
上野先生の万葉集関連の著作は、私もよく拝読しています。ユニークで読みやすく、私のような一般人にその世界を紹介してくれる最高の先達ですね。そんな方が、もう少しジャンルを広げて面白い本を紹介してくれるというのですから、これは間違いありません。
カテゴリーは「時代と人間」「人間と文学」「文学と文化」「文化と時代」など。お固い雰囲気ですが、ユーモアを交えながら、現代の生活とリンクさせながら、煽ることなくポイントを紹介してくれます。
選ばれた本も、万葉集やお伊勢参り、小泉八雲やお能など、いくらか関連性のあるものを中心に、田中角栄・上岡龍太郎・AV男優など、かなりの変化球も交えられています。
誰もが楽しめる本かどうかは分かりませんが、私と同じような読書傾向の方であれば、間違いなく読みたい本がたくさん見つかることは間違いないでしょう。ぜひ!
<個人的なメモ>
●『骨董・怪談: 個人完訳 小泉八雲コレクション』河出書房新社、小泉八雲著・平川祐弘訳 (ハーンと同時代の西洋人がもつ知識とはどのようなものだったのか、を織り交ぜながらの訳が素晴らしいとか)
●『本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人』新潮社、大塚ひかり著 (読みたい!)
●『林羅山―書を読みて未だ倦まず (ミネルヴァ日本評伝選)』ミネルヴァ書房、鈴木健一著 (儒者の地位がまだ低かった当時、どうやって出世したのかなども描かれるとか)
●『民俗と民藝 (講談社選書メチエ)』講談社、前田英樹著 (柳田國男と柳宗悦の類似点と相違点を、手際よく明らかにしていくとか)