本屋図鑑
47都道府県の「感じのいい」本屋さんを紹介。本好きにはたまらない書店愛に溢れた一冊です!
47都道府県の「感じのいい本屋さん」を、軽いタッチのイラストを交えて紹介していく、タイトル通りの本屋さんの図鑑です。
話題の本屋を紹介する本は何冊も登場していますが、いくら素晴らしいお店だとはいえ、同じ書店ばかりが紹介される傾向にあるため、あまり目新しい情報は無いことが多いものです。しかし、本書ではご近所さんへの雑誌の配達を続けているような、懐かしいタイプの本屋さんにもスポットライトを当てている点が独得ですね。
小規模の独立系出版社「夏葉社」さんが、本に関する情報をブログで発信し続けている「空犬通信」さんが執筆したもので、本屋さんへの愛に溢れています!
●第一章 本屋さんの中 (入り口・新刊平台・カウンターまわり・文芸書棚・コミック売り場など)
●第二章 町の本屋さん (駅前にある本屋さん、駅の中・帰り道・商店街・ショッピングセンターなど)
●第三章 本屋さんの棚をじっくり見る (人文書棚・文芸書棚・文脈棚・随筆棚・詩集棚・ふるさと図書コーナーなど)
●第四章 もっといろんな本屋さん (空港にある本屋さん、大学・美術館・病院・島・観光地・最北端・最南端)
●第五章 本屋さんの歴史
さらに、巻末には書店員の日常業務を簡単に紹介する「本屋さんの一日」・用語集・本屋さんをもっと知るための本なども掲載されています。
私のような趣味の偏った本好きにとっては、町の本屋さんはあまり利用する機会はありません。ここに紹介されているような書店は、「買い物をする場所」というよりも、銭湯のように「いつか消え行く懐かしい場所」として観てしまいます。第一章と第二章くらいまでは、ちょっとノスタルジックな気分になりました。
しかし、第三章では本屋さんの棚作りのプロのワザが見られますし、第四章では田舎のる小さな本屋さんが町の文化の発信地になっている様子が伝わってきたりします。新たな書店の役割を感じられるようですね。書店の棚を詳細に描いたイラストも味があっていいですね。
ちなみに、奈良県からは「商店街の中にある本屋さん」として、奈良きたまち初芝商店街の『ベニヤ書店』さんが紹介されています。
最後に、本書でもっとも記憶に残ったフレーズを引用しておきます。
自分の生活から遠い場所に、いい本屋さんがあるというのは、本当にうれしいことである。いい本屋さんがあるということは、つまり、その店のまわりに、本を愛する人が、たくさん暮らしているということでもある。
172ページより
まさにその通りですね。個人的には「自分の生活から近い場所に」と言い換えた方がリアルに感じますが、書店という商売が成り立っているその周りには、本を必要としている人たちが存在するということです。これから町の本屋さんを見るたびにこの一文を思い出しそうです。
<参考>
●空犬通信 夏葉社の新刊『本屋図鑑』が7月に出ます