切手 (NHK美の壺)
「趣味の王様」と呼ばれた切手収集。大人がはまる深い世界の入り口を垣間見れる良書です!
NHKで放送中の、毎回渋いテーマを扱う番組「美の壺」の書籍版。特に切手に思い入れがあるワケではありませんが(子供の頃、少しだけ集めてました)、改めて美の壺的な視点から見ると奥深い世界なんですね。画像多め、70ページほどの薄い本ですから、私のような初心者でもサラッと読めました。
説明文:「小さなキャンバスに凝縮された、繊細な図柄、高度な技術。世界でも評価の高い奥深い日本の切手。その「美」を指南。アート鑑賞マニュアル。」
古くは「趣味の王様」などと呼ばれた時代もあった切手収集。ピークは昭和30年代~40年代ごろだったとか。投機的な側面も加わり、「月に雁」「見返り美人」などが高値で取引されていました。私も幼い頃、少年誌にこれらの切手が紹介されているのを見て、ちょっとした憧れを抱いたものです。
しかし、成長していくにつれて郵便制度のお世話になることも少なくなり、切手を目にする回数も激減しました。切手収集など過去のものだと思ってしまいますが、こうした本を読んで少しだけその世界に興味を持って眺めてみると、確かに大人まで熱中させるだけのこだわりがあるんですね。
切手の印刷方法は、通常とは逆の「凹版印刷」という手法を用い、線が美しく見えるような繊細な技術があるのだそうです。知らなければ見過ごしてしまいそうですが、やはり質感は違うんでしょうね。
浮世絵や工芸品などを題材としたシリーズも楽しいです。しかも、名画を使用する場合でも、そのまま全図を使うのではなく、もっとも効果的に見える一部をトリミングしているのだとか。本書では、速水御舟「炎舞」、鳥居清長「雨中湯帰り」などが紹介されていますが、もとの画像と切手サイズに切り取られた画面を見比べてみるのも楽しいですね。
本書内でも、興福寺・阿修羅像、室生寺・五重塔、東大寺・執金剛神立像、法隆寺・銅造薬師如来坐像など、奈良に関係の深いものも多く紹介されており、どれも美しいんですよね。機会があれば切手蒐集を始めたくなるほど魅力的な世界でした。
気軽に読める内容ですので、切手初心者の大人な方は手にとってみてください!