森山大道 路上スナップのススメ (光文社新書)
路上を映した写真家の路上スナップの心得と作品たち。カメラを持って出かけたくなります
路上を映し続けた写真家・森山大道さんが「路上スナップ」の心得を語ったテキストと、実際に撮影した写真を掲載した一冊。
私は写真の心得はまったくありませんので、この方の名前もおぼろげにしか知りませんでしたが、キャリア豊富なその道のカリスマ的な方なんだとか。言葉にも重みがありますし、撮影した作品も面白いですね。カメラを片手に街歩きしたくなりました。
説明文:「60年代、「ブレ・ボケ・アレ」と呼ばれる作風で注目を集めたカメラマン・森山大道。あれから半世紀。路上に立ち続けた彼が、フィルムカメラ、デジカメを駆使して撮り下ろしスナップを敢行。砂町、佃島、銀座、羽田といった東京の街のほか、北関東を縦横にひた走り、いつものモノクローム以外にカラー写真も撮影。自身のスナップに対する考えや視点、カメラマンとしての姿勢やそのノウハウについて語った、写真学校の学生、カメラ愛好家必携のスナップ入門書。」
序章の冒頭に、編集者とカメラマンのこんな会話が掲載されています。
Q.「スナップ撮影を始めるにあたって、もっとも大事なことは何ですか?」
A.「何が大事かと聞かれたら、僕は必ずこう答えてきた。『とにかく表へ出ろ』と。そして、『歩け、とにかく歩け。それから、中途半端なコンセプトなどいったん捨てて、何でもかんでも、そのとき気になったものを、躊躇なくすべて撮れ』と。」
100メートルで36枚撮りフィルムを1本撮り終えていたというほど、撮影枚数の多いタイプの方で、道具にこだわらず今でもデジカメを使用したり、撮影したものは一切見なり消したりせず(後の時代に面白いと評価されるかもしれないから)と、ラフなスタイルがかっこいい方ですね。
この本では、カメラマンと編集者の二人で、砂町(商店街)、佃島(人工的な海岸)、銀座(街の中)、羽田(広大な風景)、国道(車に乗って移動しながら)と、舞台を変えながら撮影しています。作品は手触りがザラッとしていそうな白黒写真がメインで、デジカメでは華やかな色彩があふれるものも。何気ない街の風景を切り取っています。
各章の冒頭では、8ページくらいずつのカメラマンの言葉がテキストとして掲載されていて、彼がどんなことを考えて、どんな風に撮影しているのかがよく分かります。このバランスで見せられると、写真とテキストが増幅しあって、ますますいいですね。
個人的にはとても面白く読めましたので、街角をテーマにした写真やアートに興味のある方は読んでみると刺激になるかもしれません。