逃避めし
漫画家・吉田戦車さんが迫る締切を気にしながら作る創作料理(逃避めし)のエッセイ本
漫画家・吉田戦車さんの創作料理エッセイ本。2008年から「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載した内容をまとめたものだとか。タイトルの「逃避めし」とは、締切が迫った時に限って、何となく思いついた料理を作りたくなるという、現実逃避の料理のことのようです。
説明文:「シメキリ迫る非常時に、なぜか創作料理を作ってしまう。そんな逃避の日々を綴った、著者初の私的料理エッセイ。描き下ろしイラスト多数と、新作『めしまんが』も収録。」
この連載当時は、吉田さんは自宅とは別に仕事場を持ち、そのキッチンで料理なさっていました。ちなみに、奥さまも漫画家(伊藤理佐さん)で、この時期に妊娠・出産も経験したりしています。
自然とご飯が用意されていて、三食自宅で食べられるような環境ですが、一人暮らし歴が長い男は、たまに適当なお料理を作りたくなったりするものなんですよね。ちゃんとしたものを作ろうなんて気はさらさらなく、適当なものを思いつきで作ってみたい、美味しいかどうかは別問題だったりします。私も自営業者で年齢も似たようなものですので、かなり共感しながら読めました。
登場するお料理は、どれも仕事場の小さなキッチンで作るシンプルなものばかり。お料理の参考にはならないでしょう。しかし、自宅なのに駅弁風にしたり、どこかで観て来たローカルメシを再現したり、締め切り前の栄養補給に簡単に食べれる納豆メニューが出てきたりと、普通の料理本とはまったく違う楽しさがあります。
また、漫画家さんらしく、小説や漫画などに登場したメニューを再現しようとしたりするのも面白いですね。絵本「ひとまねこざる」のうどん、漫画「おそ松くん」のチビ太のおでん、漫画「夕やけ番長」の納豆ご飯、その他にも池波正太郎さんや椎名誠さんの名前も登場し、ちょっと楽しくなりますね。
個人的には、ペペロンチーノを作る回で、「初めて作ったスパゲッティは、椎名誠氏にエッセイに出てきた「マヨネーズと醤油かけ」だったと思う。」という記述が懐かしかったです。茹でたパスタにマヨ醤油をかけるだけなんですが、エッセイの中ではみんな「ハイカラだね!」と言いながら食べるというのがとても美味しそうで、私もよく作りました(笑)
もう一つ余談ですが、赤塚不二夫さんの漫画「おそ松くん」に登場するチビ太のおでんは、コンニャク・ガンモドキ・ナルトの組み合わせが正しいのだとか。実はこれは、赤塚さんが少年時代を過ごした奈良のおでんが原型となっているのだそうです!知らなかった!
……というようなちょっと変わったお料理エッセイですが、個人的にはとても楽しく読めました。興味のある方は探してみてください。